191 「冷たい校舎の時は止まる」
こんにちは。
今回はこちらの本のご紹介を。
といいますか、最近辻村深月先生の作品に偏っておりまして申し訳ありません。「ぼくのメジャースプーン」から始まって、ついハマってしまい……。今回はなんと、その辻村先生が高校生の時から執筆されていたという初期の作品のご紹介となります。最近発売された文庫の帯にご自身のコメントがありまして「書いたのは高校3年生。主人公たちと同じ年の頃でした」とのこと。
内容を読んでみて、その才能のすばらしさに息を飲む思いでした。これが書ける高校3年生……凄いのひと言です。
〇「冷たい校舎の時は止まる」上・下巻(文庫)
辻村深月・著 / 講談社(2007)(単行本は2004年初版)
冒頭でまず「あっ」と思いました。
主人公のひとりである高校3年生の少女がまさに「辻村深月」という名前なのです。
自分にとって大切な作品のキャラクター名を自分の芸名にする俳優さんがときどきおられますが、辻村先生もまさにそうなのかなと思ったり。実は下巻の帯には「自分の名刺になる一冊ができた、と感じました」ともありますし、恐らくはそのようなお気持ちだったのではなかったかと。
「冷たい校舎の時は止まる」は、辻村先生のデビュー作であり、2004年の第31回メフィスト賞を受賞した作品です。まさに、作家・辻村深月先生が走り出した最初の物語なわけですね。
世間ではしばしば、「デビュー作にはその作家のすべてがある」と言われます。私自身、常々これは小説に限らずマンガや歌などでもそうだなと思っておりまして。
というわけで、デビュー作はぜひ読みたいと思った次第です。
さて、それではストーリーを冒頭部分だけご紹介。
プロローグでは、誰かが高校の屋上から飛び降り自殺を図るシーンが描かれますが、それが一体だれなのかは判然としません。
場面が変わって、高校3年生の生徒たち8名が大雪の中、「ほんとに学校あるのかなあ」と思いながらもそれぞれに合流しては登校するシーンに。辻村深月はそのうちの一人。幼なじみで成績優秀な男子・鷹野博嗣と登校。
ほかの子たちも登校するのですが、なぜかこの8名しか学校内にいないことが判明。お雪が降る薄暗い校舎内をみんなで手分けして探し回ってみても、職員室には先生たちはだれ一人おらず、他の教室も無人です。
なにより問題なのは、一階の扉も窓も決して開かなくなっていること。
つまり、8名はこの学校に閉じ込められてしまったのです。
ここまで読むと、楳図かずお先生のマンガ「漂流教室」を思い出しますね。でも当然、それだけではない。
なぜなら、何者かがこの8人に、冒頭のあの自殺騒動で亡くなった生徒について思い出すことを要求してくるからです。
不思議なことに、たった二か月前に起こったその自殺の騒動で亡くなった生徒のことが、8人はどうしても思い出せません。誰が死んだのかが不明なのです。記憶が消されているようなのです。
困惑する生徒たちでしたが、やがて恐るべき出来事がかれらを一人ずつ襲いはじめ……。
もうね、本当によくできた作品です。
なんといっても、高校生たちがそれぞれに本当に生き生きしていて「キャラクターが立って」います。それぞれに抱えた悩みや過去があり、それが丁寧に描写されていくので、同じ年ごろの読者には共感されることはまちがいないでしょう。
ただし、時代が少し前であるため、今なら「スマホ」が出てくるはずのところ「二つ折りの携帯」になっています。青春ものの作品ではどうしようもないと思うのですが、こればかりは今を生きる中高生には「古い作品」として敬遠されてがちな要素なのかもしれませんね。
それから、リアルな高校生を描いているだけに容赦ない部分も多く。女の子の一人は家庭の事情から「ウリ」をやっていたりするので、決して道徳的とは言えない描写も多々ございます。
なにより自殺を描いており、学校図書館に置くこと、生徒さんにお勧めするときにはある程度のクッションが必要かもしれないな……とは思いました。
が、とてもよい作品なので! お勧めはしておきたいと思ったわけです。
それでは、今回はこのあたりで。





