189 「名前探しの放課後」
こんにちは。
今回はこちらの本のご紹介を。
今回もまた、少し前にご紹介した「ぼくのメジャースプーン」「凍りのくじら」「子どもたちは夜と遊ぶ」と関連性のある小説です。
〇「名前探しの放課後」上・下巻(文庫)
辻村深月・著 / 講談社(2010)(単行本は2007年初版)
前回ご紹介した「子どもたちは夜と遊ぶ」のほうは、凄惨な殺人事件がしっかり描写されていてかなり血なまぐさく、学校図書館に置くのはためらう向きも多そうでしたが、今回の物語は学校図書館向きかもしれません。感覚としては「かがみの孤城」にも通じる少年少女による群像劇。ただし高校生が中心ですけれども。
今回の重要なファクターは、まず「タイムスリップ」です。
主人公の高校生・依田いつかがハッと気づくと、なぜか自分が三カ月前の時点に戻っているのです。
クリスマス・イブに起こった自分の高校の生徒の自殺のニュースを覚えているのに、いきなり三カ月前に戻っているわけです。
ここでもう、まず「つかみ」はオッケー。先を読まないわけにはいかなくなります。
いつかも当初はなにかの間違いではないか……と考えるのですが、1月に出産したはずの姉のお腹は大きいままだし、別れたはずの彼女とはまだ付き合っている状態。これは信じざるを得ません。
自分の状況が不可解すぎて戸惑ういつか。でもとりあえず、誰かには相談しようと考えます。そして思いついたのが、クラスメートでろくに話をしたこともない少女・坂崎あすな。なぜ彼女に声を掛けたのかというと、彼女がいつかのよく知るようなタイプの女の子たちとはまるでちがっていて、本をよく読む人だったから。
「名前探しの」というタイトルの理由は、いつかには自殺する生徒の名前が思い出せないからです。この事態に対処するため、あすなをはじめ、自分の友達やその友達、その彼女などとチームを作って対処しはじめるいつかなのですが、その生徒の正体はなかなかわからず……。
それぞれの人物が、それぞれに抱えた悩みや苦しみ、疑問を抱えながらもひとつの目標に向かって力を合わせ、ときには反目しあったり皮肉を言いあったり。でも、温かい目で見守ることができる人物造形。
まあ唯一、「この生徒はダメでしょ」と思われる子も登場しますが、基本的に全体の流れは温かく、それぞれの子に説得力があり、応援できる造形です。
冒頭のいつか君が「顔がよくて」「女にモテて、すぐ付き合って」「その女の子にすぐ飽きてとっかえひっかえ」みたいな少年で、ややがっかりしてしまうかと思うのですが、やがて彼自身が抱える深い問題が明らかになったとき、心から応援したい気持ちが生まれているのです。
もちろん、ここまでご紹介してきた作品群の登場人物もちらちらと登場。ここが堪えられませんよね! ついにやにやしてしまう。
果たして自殺をしてしまうのは一体だれか?
いつかたちはそれを止めることができるのか……?
少年少女ハートフル・ミステリーとでも呼ぶべき作品。よろしかったらご検討してみられてはいかがでしょう。
ではでは、今回はこのあたりで。





