187 「子どもたちは夜と遊ぶ」
こんにちは。
今回はこちらの本のご紹介を。
今回もまた、少し前にご紹介した「ぼくのメジャースプーン」「凍りのくじら」と関連性のある小説です。
〇「子どもたちは夜と遊ぶ」上・下巻(文庫)
辻村深月・著 / 講談社(2008)(単行本は2005年初版)
初版年だけ見ると「凍りのくじら」とほぼ同じなんですね。執筆された順序としてはこちらが先だったようです。というのも、辻村深月先生ご自身がこちらの文庫の帯に「この小説が書けたから、たぶん今でも作家でいられるのだと思っています。」というコメントを書いておられるからです。辻村先生にとって、特に思い入れのある作品であることが窺えます。
今回は「ぼくのメジャースプーン」で大切な部分を担う大学教授・秋山先生がしっかりとご登場。「メジャースプーン」の方に出てくるほかの人物も、最初はこちらで登場していたようですね。
ところで、これは先に申し上げておきます。一応前回の作品紹介と関連しているためこちらのエッセイで紹介してはいますが、こちらの作品は「ぼくのメジャースプーン」や「凍りのくじら」ほど学校図書館向きとは言えないかもしれない……ということです。
もしも映画にするとすればR18またはR15かPG12にはなってしまいそうなのです。そのぐらいハードな犯罪行為や凌辱行為が描写されている部分があるためです。
主人公も小学生や高校生ではなく、大学生ですしね。
さてさて。
ということで、少しだけストーリーのご紹介を。
こちらの作品は、多くの人物による多視点での描写の作品となっていますが、主な登場人物は大学生数名と大学教授、そして刑事さんたちです。
冒頭の主人公は高校生なのですが、彼はすぐにストーリー上から消えて行方不明に。
D大工学部に通う狐塚孝太と木村浅葱は、ふたりとも優秀な学生。海外留学を懸けた論文のコンクールに出品するも、「i」を名乗る謎の人物に最優秀賞を搔っ攫われます。主催者側は「i」に名乗り出るようメッセージを出すのですが、相手の正体は不明なまま。
浅葱はその「i」がもしかすると、幼いころに生き別れた自分の双子の兄であり、自分よりもずっと優秀だった藍ではないかと疑い始めます。。
やがて冒頭の高校生の行方不明事件(とはいえ殺人事件であることを疑われている)が起こり、それが自分の犯行だとほのめかす謎のメールが浅葱のもとにとどいて……。
「i」が浅葱に求めたのは、殺人ゲーム。
互いにヒントになる言葉を与え、それに沿った人物を選んでひとりずつ交代で殺していく……という恐るべきゲームでした。
物語はこの狐塚と浅葱を中心に、故郷から狐塚を追いかけてきた女の子で教員を目指す月子や狐塚たちと同期の石澤恭司、そしてもちろん教授・秋山先生を中心に進んでいきます。「i」の正体はなんなのか? 殺人ゲームの目的は? 巻き込まれた浅葱と狙われた人たちの未来は?
謎が謎を呼び、人物たちの心理描写もすばらしく、ラストのぎりぎりまで真相はわからなくてずっとドキドキしながら読み進めてしまいました。まちがいなく傑作だと思います。ミステリーとしてもですが、人物を表現する「小説」としての出来が素晴らしいです。
「学校図書館に置いておくべき本かどうか」については、先述したとおりでやや疑問符はつくのですが、読むに値する作品だと思いました。
ではでは、今回はこのあたりで。





