185 「凍りのくじら」
こんにちは。
今回はこちらの本のご紹介を。
少し前にご紹介したとおり「ぼくのメジャースプーン」と関連性のある小説で、その流れで私も手にとった作品です。
〇「凍りのくじら」
辻村深月・著 / 講談社(2008)(単行本は初版年2005年)
といいますか、初版年を見るとこちらのほうが先に出版された本なのですね。けれども、読むうえで前後どちらになっても問題にはなりませんでしたので、よろしかったら。
「ぼくのメジャースプーン」では、とあるひどい事件で心を壊され言葉を失ってしまった少女が登場しますが、こちら作品にもその女の子が登場しています。あまり出番は多くなく、むしろ焦点があたっているのは、その女の子が事件よりもまえに「あの子には勝てない」と言っていたピアノの天才少年・郁也くんの方です。
ということで、今回もなるべくネタばれを避けつつストーリーのご紹介を。
主人公は高校生少女・理帆子。
五年前に失踪した写真家の父が藤子・F・不二雄のファンで、「藤子先生」と呼び「ドラえもん」をこよなく愛していた人だったこともあって、理帆子も「ドラえもん」が大好きです。
ただ、そのことを周囲の友人たちに漏らすことはありません。
彼女は周囲の人たちからいつも距離を感じていて、常にどこにも居場所のない気持ちを抱えています。父の失踪後、二人で暮して来た母も二年の余命宣告を受けて入院中。
クラスメイトとも「カレシ」とも中途半端な付き合い方をしながら、SFを「すこし・ふしぎ」と表現していた藤子先生のように、いろんな人たちを「すこし・なんとか」というふうに評価して、どこかで見下しているような少女でした。たとえば「すこし・不安定」とか「すこし・不幸」などといったふうに。そして自分のことは「すこし・不在」。
さてそんな理帆子に、あるとき「写真のモデルになってくれないか」と声を掛けてきた先輩の男子が。
新聞部だという不思議なたたずまいの彼と話すうち、いつしか理帆子は他の人にはしない大好きな「ドラえもん」の話をしていて……。
それぞれの章に「ドラえもん」に登場する不思議な道具の名前があてられ、内容も「ドラえもん」とは切っても切れない構成。たとえば「もしもボックス」や「どくさいスイッチ」など。辻村先生ご自身が非常に「ドラえもん」を大切な作品として考えておられるのが伝わってきました。
冒頭、どうもすぐに好きになれるタイプの主人公でないのはおわかりいただけるかと思いますが、それでもどんどん物語に引き込まれてしまうのはさすがの筆致です。
これはますます、ほかの関連作品も読みたくなってまいりました。
学校図書館に置くのも、「ドラえもん」を知っていて好きな子なら読みやすいかもしれませんし、いいのではと思います。
ではでは、今回はこのあたりで。





