181 「暁星」
こんにちは。
今回は、今年2026年の本屋大賞から。
その第5位となった作品です。
〇「暁星」
湊かなえ・著 / 双葉社(2025)
今年から配属された学校では、順位が決定する前からノミネート作品の多くを購入されていて、こちらもその中にありまして。
これまで私は大賞と、せいぜい2位、3位ぐらいまでのものしか購入しなかったので、この入れ方はすごいなあとは思いつつ、「そこまですることかしら」と一抹の疑問も覚えながら手に取りました。
さてさて。
冒頭から、大変「攻めた」内容の小説です。
正直「この時期に、よく書いたなこれ」と思いました。
なんといっても、日本人なら記憶にも新しいあの元総理襲撃事件を彷彿とさせられるシーンからだからです。信者から大金をまきあげる不気味な宗教団体ももちろん登場。もう冒頭から怖さが満載です。
もう一つ、印象的だったのは構成の妙。
前半が、事件の犯人として逮捕された主人公・永瀬暁の手記と、事件に関連した人々のSNS発信やインタビュー記事をまとめたものとなっており、後半がもう一人の主人公である女性・星子(小説家としてのペンネームは金谷灯里)による「フィクションだ」と言いながらもどう考えてもノンフィクションとしか思えない小説「金星」になっています。
男性主人公・暁には、かつて自殺してしまった小説家の父・永瀬明(ペンネームは長瀬暁良)がいました。
暁が生前の父を知る人々に会い、父の死の理由を探っていくうち、やがて多くの小説家を擁すると噂される、とある宗教団体の闇が見えてきます。実は暁の母親も、父の死後にその宗教団体に絡めとられて、暁と心臓病を患う弟の輝のために本来使われるべきだった多額の父の遺産をそちらに寄付してしまっていました。
とある講演会で、その宗教団体の重要人物と思われる男性で小説家でもある男性を襲う暁。用意周到に準備したとはいえ、それは成功してしまい、暁は逮捕されて、編集者から望まれるまま書いたというのが前半の手記「暁闇」。
でもこちらを読むだけではわからなかった事件の全貌というか輪郭が、後半の「金星」を読むことによってはっきりとしてくるのは、さすがの筆致でした。
というわけでミステリー作品としては大変上質な「凝った」作品だと思いますし、一般読者として唸らされる部分の多い良作ではあるのですが、さて学校司書として「この本を学校の図書館に置いておく意味は?」と考えると少し疑問も覚えます。
ほかに、いわゆる昔から「名作」と呼ばれて来た作品を差し置いてわざわざ入れる必要があるか……と問われると、どうかなあ? と正直思ってしまう。
人生は大抵ままならないし、どんなに頑張っても必ず報われるとは限らない。毒親はどこまでいっても毒親で、期待するだけ無駄である。それは事実でも、ただそれを若い読者に見せつけるだけの作品では学校に置く意味は薄い気もいたしますね。その後、わずかな希望をにじませているのだとしても。
ということで、私個人はあまり賛成はできませんけれども、ほかの司書さんたちはどのようにお考えになるでしょうか。
ではでは、今回はこのあたりで。





