176 「PRIZE-プライズ-」
こんにちは。
今回も本のご紹介です。
〇「PRIZE-プライズ-」
村山由佳・著 / 文芸春秋(2025)
「PRIZE」は2026年、第23回本屋大賞にて第三位を獲得した作品。少し前にご紹介した朝井リョウ氏の「イン・ザ・メガチャーチ」が第一位の大賞でしたね。
なんと前任の司書さんが、この賞にノミネートされていた本のほとんどすべてを購入していたようで、今回は手にとる機会になりました。ほかの作品も少しずつ読んでご紹介したいと思っております。
さてさて。
「PRIZE」とは、この本の冒頭にも記述がある通りで「賞」のこと。それも、特にこの作品で言及されている賞は、年間に二度、小説に対して与えられる「直木賞」を指しています。
主人公の48歳の女性小説家・天羽カイン(本名は天野佳代子)は、ベストセラーを何度も出している押しも押されもせぬ売れっ子小説家。新人賞や本屋大賞はすでに受賞したことがあり、直木賞にも何度もノミネートされてきたのですが、この直木賞だけがなかなか獲れず苛立っています。
夫とは東京と軽井沢とで分かれての別居婚中ですが、その夫とはぎくしゃく。カインには目付け役の老いた男をつけておきながら、自分は好き勝手に若い女と遊び歩く夫にうんざりしつつも、なにより大事な自分の小説のことに集中せざるを得ない日々。
小説は、この小説家天羽カインとその担当編集者である若い女性・緒沢千紘、また別の出版社の中年男性編集者・石田三成の三名の視点で描かれていきます。
自分でも趣味として小説を書いている身として、個人的に心に刺さる描写が多数。こんなにも自分自身を削らなければ小説というものは書けないのだろうか……と思ったり。
一方、こだわりのあまりにワガママ傍若無人にふるまう大物作家に振り回される編集者たちの悲哀や苦しみ、編集者同士の葛藤や嫉妬の描写も見逃せません。このあたりは、すでにご紹介した「本のエンドロール」に通じる部分も多かったと思います。
人間の欲望、いやらしい部分もこれでもかと描かれ、「一体だれがモデルなのかしら」とふと思ってしまうほど。実在する出版社名もたくさん出てきますし、作家の名前も少し変えてはあるものの「ああ、あの人のこと?」と思わされるような名前。
特に新人の小説家の鼻持ちならない態度の描写が「あ、いたたた……」と感じてしまうようなもので、個人的に反省しきりでした。
「よくこんなの書けたな」というのが正直なところですが、作家の狂気じみた性のようなものが感じられて印象的な作品でした。編集者もしかり。
さて、ここまで書いて司書である私は考えております。
「これは、わざわざ学校図書館に置いておくのによい本だろうか??」
まさにこれです。
あからさまな犯罪や性的な描写はないので、置けると言えば置けるのですが、「置く価値があるか否か」というとなかなか難しい気もしました。
こればかりは、それぞれの図書館の司書さんでお読みいただいてお決めいただくべきことかなと思います。
ではでは、今回はこのあたりで。





