173 「黄色い目の魚」
こんにちは。
今回もまたもや本のご紹介です。
〇「黄色い目の魚」
佐藤多佳子・著 / 新潮社(2005)(単行本は2002年)
佐藤多佳子先生の本はすでにいくつかご紹介しておりますが、これまたやっぱりというか本当に良い作品。
中高生には読んでみて欲しいなと思える本です。その中でも、特に絵を描くことに関心がある人や、スポーツの部活をやっている人には響くのではないかと。
冒頭の第一章は、何年も前に母親と離婚して、ろくに顔も覚えていない父親と会うことになってしまった少年・悟の物語から始まります。父親のテッセイ(哲生と書きます)は、狭い部屋じゅうに自分の描いた絵を置いている人。別にプロの絵描きということでもなく、誰かに絵を認められたこともないのに、ひたすらに絵を描き続けていた人でした。
第二章では、二人目の主人公と言える少女・みのりが登場。彼女もまた、絵を描く大人の男である叔父・通ちゃんと深く係わりがあります。好き嫌いの感情が激しく、人をすぐに嫌いになってしまうみのりは、クラスでも家族の中でも何か浮いていて、居場所のない存在。もっとも信頼する大人は、叔父の通ちゃん。幼いころから彼の一人住まいの部屋に入り浸るようになっていました。
やがて第三章で、高校生になった悟とみのりはついに出会うことに。その出会い方といいお話の展開といい、どこをとっても繊細で丁寧で真摯だなあと思わされます。
悟は高校の部活でサッカーをしながらも、気が付けば絵を描いている少年。それも、ほかならぬみのりに出逢ったことでより強くその世界に引き入れられていきます。
二人の関係は友情とも違うし、恋愛とも違う。二人ともそう思っていながら、どうしても相手のことを考えずにはいられない……。それは想像もつかないほどにピュアで強い感情に他ならないのでした。
かれらは当然、大人たちの狡さや弱さにも直面し、悩み苦しむことにもなります。このもどかしい気持ち、熱い感情で七里ガ浜を駆け抜けてしまう気持ち、自分の青春時代をどうしても思い出してしまう。そんな作品でした。
この感動は、読んでみないと伝わらないという気がします。
ただし、中高生のセックス事情なんかも出てきてしまうので(しかし人生とはそんなキレイごとだけで構成されてはおりませんよね・苦笑)、選書についてはそれぞれの司書さんのご判断にお任せしたいところ。
ではでは、今回はこのあたりで。





