第八十三話 「好き」
翌日。
放課後。
雪音は校門の前で輝夜を待っていた。
昨日。
「次に会う時、ちゃんと答える」
そう言った。
だから今日は。
逃げるつもりはなかった。
「雪音。」
声がする。
振り返ると、輝夜が立っていた。
「待った?」
「いや。」
雪音は首を振る。
「少し歩こう。」
「うん。」
二人は並んで歩き始めた。
しばらく。
どちらも何も言わなかった。
やがて。
雪音が足を止める。
「輝夜。」
「何?」
「昨日の続き。」
輝夜の表情が少し緊張する。
「うん。」
雪音は輝夜を見る。
「俺が言いたかったこと。」
「……。」
「俺は、お前と一緒にいるのが好きだ。」
「それは昨日も聞いた。」
「ああ。」
雪音は少し笑う。
「でも、今日はちゃんと言う。」
一度。
ゆっくり息を吸う。
「俺は、輝夜が好きだ。」
「……。」
輝夜が目を見開く。
「友達としてじゃない。」
「一緒にいたい。」
「これからも、ずっと。」
輝夜の目に涙が浮かぶ。
「……本当に?」
「ああ。」
「私でいいの?」
「お前がいい。」
その言葉に。
輝夜は俯く。
肩が小さく震えている。
「……泣くなよ。」
「だって……。」
輝夜は涙を拭う。
「嬉しいんだもん。」
そして。
顔を上げる。
「私も。」
「雪音が好き。」
「……。」
「ずっと好きだった。」
雪音は少し照れながら笑った。
「そっか。」
「うん。」
輝夜は手を差し出す。
「じゃあ。」
「これからは……恋人?」
雪音はその手を見る。
そして。
そっと握った。
「ああ。」
「よろしく。」
「こちらこそ。」
二人は顔を見合わせる。
そして。
どちらからともなく笑った。
――――
その夜。
雪音が家に帰る。
「おかえりなさい。」
珠音が玄関まで迎えに来る。
「ただいま。」
「今日は遅かったわね。」
「ちょっと話してた。」
「そう。」
珠音は雪音の顔を見る。
「……何かいいことあった?」
「え?」
「嬉しそうだから。」
雪音は少し黙る。
そして。
「……まあな。」
「ふふ。」
珠音はそれ以上聞かなかった。
「夕飯、できてるわよ。」
「うん。」
雪音は靴を脱ぐ。
その顔には。
今までにはなかった穏やかな笑顔が浮かんでいた。
――――
同じ頃。
輝夜も自分の部屋で。
今日のことを思い出していた。
「……恋人。」
その言葉を呟く。
顔が熱くなる。
「……嬉しい。」
輝夜は枕に顔を埋める。
そして。
小さく笑った。
雪音と輝夜。
二人の関係は。
今日。
友達から。
恋人へと変わった。




