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第八話 「小さな約束」

月曜日。


昼休み。


「雪音さん!」


輝夜がいつものように雪音の席へやって来た。


「今日も一緒に食べよ!」


「はい。」


二人は弁当を持って食堂へ向かう。


すると途中で、小さな人影がこちらへ駆け寄ってきた。


「あっ……。」


天海美羽だった。


「こんにちは。」


「こんにちは、美羽さん。」


雪音が一礼する。


美羽は少し遠慮がちに口を開いた。


「あの……。」


「今日も、ご一緒してもいいですか?」


「もちろん!」


輝夜が笑顔で答える。


「三人で食べよう!」


美羽は嬉しそうに頷いた。


⸻


食事をしながら、輝夜がふと思い出したように言う。


「そうだ!」


「今度の土曜日、寮で交流会があるんだよ!」


「交流会、ですか。」


「うん!」


「みんなで料理したり、お菓子食べたりするだけなんだけど。」


雪音は少し考える。


「参加した方がよろしいのでしょうか。」


「もちろん!」


輝夜は笑う。


「寮生はみんな参加するから!」


「分かりました。」


雪音は静かに頷いた。


⸻


放課後。


雪音は図書室で本を借りていた。


帰ろうとした時だった。


「千夜さん。」


振り返る。


藤田皐月だった。


「こんにちは。」


「こんにちは。」


皐月は借りていた本を見て微笑む。


「料理の本ですか?」


「はい。」


「輝夜さんに教えてほしいと言われましたので。」


皐月は思わず笑った。


「西ノ宮さんらしいですね。」


「料理は少し苦手ですから。」


「そうなのですか。」


雪音は少し驚いた。


「学院では有名ですよ。」


皐月はくすっと笑う。


「でも、頑張り屋さんなんです。」


「だから皆さん応援したくなるんですよ。」


雪音は静かに頷いた。


「そういう方なのですね。」


⸻


夜。


女子寮。


雪音が部屋へ戻ろうとすると、廊下で美羽が壁にもたれ掛かっていた。


「美羽さん?」


「あっ……。」


美羽は慌てて姿勢を正す。


「少し、立ちくらみがして……。」


雪音は表情を変えず、美羽の顔色を見る。


「無理はなさらないでください。」


「部屋までお送りします。」


「でも……。」


「遠慮は不要です。」


雪音は美羽の歩幅に合わせて、ゆっくりと歩き出す。


部屋の前へ着くと、美羽は深く頭を下げた。


「ありがとうございました。」


「お大事になさってください。」


短い会話だった。


しかし、美羽は安心したように微笑む。


「雪音さんって、本当に優しいですね。」


雪音は少しだけ困ったように笑う。


「当然のことをしたまでです。」


そう言って、自室へ戻っていく。


その背中を見送りながら、美羽は小さく呟いた。


「……やっぱり、素敵な人。」


静かな夜が、女子寮を包んでいた。

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