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第六十四話 「決着への一歩」

「来い!」


一輝が叫ぶ。


真昼と雪音が同時に踏み込んだ。


――キィンッ!!


三本の刃がぶつかる。


一輝は真昼へ斬り込み、真昼が受け止める。


その横から雪音が短刀を振る。


「っ!」


一輝が身を捻ってかわす。


「まだだ!」


一輝はそのまま雪音へ斬り返した。


――ガキィン!


雪音の短刀が受け止める。


「……!」


腕に衝撃が走る。


短刀では。


やはり刀と正面からぶつかり続けるのは厳しい。


それでも雪音は退かない。


「この程度……!」


「無理をするな!」


真昼が横から一輝を斬り払う。


一輝は後ろへ飛んだ。


「助かった。」


「礼を言ってる場合か。」


真昼は雪音の手を見る。


短刀を握る手から、また血が流れている。


「その短刀じゃ限界が近い。」


「……分かってる。」


雪音は自分の手を見る。


本来なら。


自分の桜色の刀を使うべきだった。


だが。


ここは天女学院。


普段から刀を持ち歩いているわけではない。


だから今、手元にあるのは袖に隠していた短刀だけ。


「それでも、俺は行かなきゃならない。」


雪音は学院の外を見る。


「父上が五条会本家を襲っている。」


「俺が止める。」


真昼は一瞬黙った。


そして。


「なら、ここは俺が終わらせる。」


「……真昼?」


「一輝は俺が引き受ける。」


真昼が一輝へ向き直る。


「お前は父親のところへ行け。」


雪音は驚いたように真昼を見る。


「……いいのか?」


「ああ。」


「ただし。」


真昼の蒼い瞳が雪音を射抜く。


「一人で抱え込むな。」


雪音は何も言えなかった。


今まで。


そんな言葉を誰かから掛けられたことがなかった。


「……分かった。」


小さく答える。


一輝が二人を見て笑った。


「おいおい。」


「勝手に話をまとめるなよ。」


一輝が刀を構える。


「俺が欲しいのは真昼だ。」


「だから、ここから先は――。」


一輝の殺気が一気に膨れ上がる。


「俺とお前の時間だ。」


真昼も刀を構えた。


「望むところだ。」


雪音は一輝を見つめる。


そして短刀を握り直す。


「……真昼。」


「何だ。」


「死ぬなよ。」


「お前もな。」


雪音は踵を返す。


父のもとへ向かうために。


その背中を、一輝は追おうとした。


だが。


「行かせない。」


真昼が立ちはだかる。


一輝の口元が歪む。


「そうだ。」


「それでいい。」


二人の間に、再び殺気が満ちる。


その頃。


雪音の姿を見送っていた輝夜は、まだ動けずにいた。


「……雪音。」


秘密を知ってしまった。


男だったことも。


一ノ瀬の若頭だったことも。


それでも。


今まで一緒に過ごした時間まで嘘だったとは思えなかった。


輝夜は静かに拳を握る。


「帰ってきたら……全部、聞かせてもらうからね。」


そして雪音は。


一ノ瀬雪影が待つ場所へ向かって走り出した。

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