第六十三話 「退けぬ理由」
一輝の刀が振り下ろされる。
――キィンッ!
真昼が受け止めた。
「っ……!」
一輝が力を込める。
「どうした、真昼!」
「……うるさい。」
真昼は刀を滑らせ、一輝の刃を逸らす。
その瞬間。
「はあっ!」
雪音が横から斬り込んだ。
――ガキィン!
一輝は咄嗟に刀を返し、雪音の短刀を受け止める。
「二人がかりか。」
「お前が兵を連れてきたんだろ。」
雪音が短刀を押し込む。
「文句を言うな。」
「ははっ!」
一輝は笑いながら距離を取った。
「いいぞ。」
「その目だ。」
一輝は雪音を見る。
「お前も真昼と同じ目をしている。」
「……何?」
「何かを背負って、それでも前に進もうとする目だ。」
雪音の表情が険しくなる。
「勝手なことを言うな。」
「俺とお前を一緒にするな。」
「俺は――」
雪音は一度、学院の外へ視線を向ける。
その先にいるのは。
自分の父。
一ノ瀬雪影。
「父上を止めなきゃならない。」
その言葉に、真昼が雪音を見る。
「……雪音。」
「何だ。」
「お前の父親が、五条会を襲っている。」
「ああ。」
雪音は頷く。
「だから俺は行く。」
「父上を止める。」
「そして……ケジメをつける。」
その声には迷いがなかった。
一輝が笑う。
「なら、俺を倒して行け。」
雪音が一輝を見る。
「そうする。」
「だが、その前に――。」
雪音は周囲に残る兵達へ視線を向けた。
「こいつらを片付ける。」
「真昼。」
「ああ。」
真昼も周囲を見る。
「一気に終わらせるぞ。」
「分かった。」
二人が同時に動く。
雪音は兵達の間へ飛び込む。
短刀が閃く。
一人。
二人。
三人。
次々と兵達が倒れていく。
真昼もまた、立ちはだかる兵達を一人ずつ退けていく。
「なっ……!」
「速すぎる!」
兵達の間に動揺が広がる。
「怯むな!」
一輝が叫ぶ。
しかし。
もう遅かった。
最後の一人が地面へ倒れる。
静寂。
そこに残ったのは。
真昼。
雪音。
そして一輝。
一輝は周囲を見回した。
自分が連れてきた兵は、全員倒されている。
「……はは。」
一輝は笑った。
「やっぱり最高だ。」
雪音は短刀を構える。
「終わりだ、一輝。」
「俺は父上のところへ行く。」
一輝は刀を握り直した。
「まだ終わってない。」
「ここからが本番だ。」
真昼も刀を構える。
「雪音。」
「分かってる。」
二人は並んで立つ。
その光景を見ていた輝夜は、胸元で手を握り締めた。
「……雪音。」
さっきまで「千夜さん」と呼んでいた相手。
今はもう。
一ノ瀬雪音という、一人の男として見ている。
それでも。
輝夜の中にある気持ちは、変わっていなかった。
そして。
一輝が笑う。
「来い。」
「五条真昼。」
「一ノ瀬雪音。」
「ここで全部、決着をつけようぜ。」
二人は同時に地面を蹴った。




