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第六十二話 「白夜叉と毘沙門天」

「さあ。」


一輝が刀を構える。


「続きをやろうぜ。」


真昼は黙って刀を握り直した。


雪音も短刀を構える。


三人の間に、張り詰めた空気が流れる。


先に動いたのは一輝だった。


「うおおおっ!」


一輝が真昼へ突っ込む。


――キィンッ!


真昼が刀で受け止める。


「っ……!」


「まだだ!」


一輝がさらに踏み込む。


真昼は刃を受け流し、そのまま一輝との距離を取った。


その瞬間。


雪音が一輝の横へ回り込む。


「はあっ!」


――ガキィン!


一輝が振り返り、雪音の短刀を受け止める。


「お前も来るか、白夜叉!」


「邪魔をするならな。」


雪音は短刀を押し込む。


「俺にはやることがある。」


一輝が笑う。


「やること?」


「ああ。」


雪音の紅い瞳が鋭くなる。


「父上を止める。」


一輝の笑みが僅かに変わる。


「一ノ瀬雪影か。」


「そうだ。」


雪音は一輝を睨む。


「俺は、ここでお前たちを退ける。」


「その後で父上のところへ行く。」


一輝は楽しそうに笑った。


「なるほどな。」


そして。


真昼へ視線を向ける。


「だが、俺が欲しいのはお前だ。」


「五条真昼。」


真昼は刀を構える。


「……だったら来い。」


「相手をしてやる。」


一輝が嬉しそうに笑った。


「それだ!」


一輝が再び真昼へ斬り込む。


――キィン!


二人の刀が激しくぶつかる。


雪音はその隙に周囲を見る。


まだ兵が残っている。


「……多いな。」


一人の兵が雪音へ襲い掛かる。


「死ね!」


――キンッ!


雪音は短刀で受け止める。


そのまま相手の懐へ入り込み、柄で鳩尾を打つ。


「ぐっ……!」


男が崩れ落ちる。


次の兵が迫る。


雪音は身体を捻って避ける。


「遅い!」


短刀が閃く。


兵の刀が弾き飛ばされた。


しかし。


別の兵が背後から迫る。


「雪音!」


真昼の声。


雪音が振り返る。


――ザンッ!


真昼が兵を斬り伏せる。


「後ろだ。」


「……助かった。」


「気を抜くな。」


「分かってる。」


二人は一瞬だけ視線を交わす。


敵同士だったはずの二人。


それでも今は。


同じ敵を相手にしていた。


「……面白い。」


一輝が二人を見る。


「五条真昼と一ノ瀬雪音。」


「二人が並んで戦うとはな。」


雪音は一輝を睨む。


「勘違いするな。」


「俺とこいつは馴れ合っているわけじゃない。」


「今は、お前たちを退ける必要があるだけだ。」


真昼も頷く。


「その通りだ。」


一輝は笑う。


「それでもいい。」


「俺は真昼と戦えれば、それでいい。」


一輝が刀を構える。


「白夜叉。」


「お前は兵を相手にしていろ。」


「真昼は俺がもらう。」


雪音は短刀を握り直す。


「断る。」


「俺の邪魔をするなら、お前も倒す。」


一輝の笑みが深くなる。


「そうこなくちゃな。」


「なら――。」


一輝が地面を蹴る。


「二人まとめて相手にしてやる!」


真昼も前へ出る。


雪音も短刀を構える。


――キィンッ!!


三人の刃が激しく交差した。


その周囲では。


雪音と真昼の戦いを見守る者。


逃げる生徒達。


そして。


一ノ瀬の白夜叉の正体を知ってしまった輝夜がいた。


輝夜はただ、雪音を見つめていた。


「……雪音。」


そして雪音はまだ知らない。


この戦いが終わった後。


自分を待つ、さらなる戦いを。

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