第六十一話 「隠していた理由」
「……雪音。」
輝夜は、その名前をもう一度呟いた。
目の前で戦っている白髪の少女。
いや。
少女ではない。
一ノ瀬雪音。
男。
それが分かってしまった。
「どうして……。」
輝夜の胸に、いくつもの疑問が浮かぶ。
なぜ女として学院にいるのか。
なぜ自分に何も言わなかったのか。
そして。
なぜ、あんなにも自分を傷付けるような戦い方をするのか。
しかし。
今は聞けない。
目の前では、戦いが続いている。
「はぁっ!」
雪音が兵を倒す。
その横では、真昼と一輝が激しく刃を交えていた。
――キィン!
「どうした!」
一輝が笑う。
「その程度か、真昼!」
「……うるさい。」
真昼が刀を振り抜く。
一輝が受け止める。
二人の刀が激しくぶつかる。
その間にも、兵達が雪音へ襲い掛かる。
「くっ……!」
雪音は短刀で受ける。
だが。
数が多い。
一人。
二人。
三人。
次々と迫ってくる。
「……!」
雪音が一人を倒した瞬間。
別の兵が背後へ回る。
「雪音!」
輝夜が叫ぶ。
雪音が振り返る。
――キンッ!
短刀が兵の刀を受け止めた。
「……!」
雪音はそのまま相手を蹴り飛ばす。
「大丈夫か。」
雪音が輝夜を見る。
「……うん。」
輝夜は答える。
けれど。
もう以前のようには雪音を見られなかった。
「千夜……さん。」
思わず、いつもの呼び方が口から出る。
雪音の表情が曇る。
「……今は、その名前で呼ばないでくれ。」
「……。」
「俺は……一ノ瀬雪音だ。」
初めて。
雪音自身が、自分の正体を認めた。
輝夜は静かに頷く。
「……分かった。」
その声は震えていた。
しかし。
そこに嫌悪はなかった。
むしろ。
心配しているような目だった。
「でも。」
輝夜は雪音を見る。
「終わったら……ちゃんと話して。」
雪音は一瞬だけ目を見開く。
「……ああ。」
短く答える。
その時。
「二人とも!」
真昼の声が響く。
一輝が大きく距離を取った。
「……。」
一輝は二人を見ていた。
そして。
「なるほど。」
口元を歪める。
「そういうことか。」
「白夜叉にも、守りたいものができたんだな。」
雪音の表情が変わる。
「……何?」
一輝は笑う。
「面白くなってきた。」
そして。
再び刀を構えた。
「さあ。」
「続きをやろうぜ。」
真昼も刀を構える。
雪音も短刀を握り直す。
そして。
三人は再び戦場へ向き直った。




