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第六十話 「真実」

――キィンッ!!


真昼の刀と一輝の刀が激しくぶつかる。


「……!」


真昼が一歩後退する。


一輝は笑っていた。


「やっぱり最高だな。」


「この感覚だ。」


「お前と刃を交えるために、俺はここまで来た。」


真昼は答えない。


ただ、一輝の動きを冷静に見極めていた。


その横では。


「はぁっ!」


雪音が兵の一人を斬り伏せる。


短刀一本。


それでも。


一切の迷いはない。


「まだ来るのか……!」


次の兵が襲い掛かる。


雪音は身体を低くしてかわし、短刀を振り抜いた。


――ザンッ!


兵が倒れる。


「……。」


雪音は息を整える。


しかし。


その姿を見ている人物がいた。


西ノ宮輝夜。


「……千夜さん?」


戦いの中で見せる雪音の姿。


普段の学院での姿とは、あまりにも違う。


美しい白髪。


紅い瞳。


そして。


敵を圧倒するほどの剣技。


輝夜は呆然と見つめる。


その時。


真昼の声が響いた。


「白夜叉!」


雪音が振り返る。


「……!」


輝夜の身体が固まった。


「白夜叉……?」


その名前。


聞いたことがある。


一ノ瀬組。


敵対する組織から恐れられている異名。


そして。


その異名を持つ人物は、一人しかいない。


「……一ノ瀬の白夜叉。」


輝夜の顔から血の気が引いていく。


「一ノ瀬……雪音……?」


視線の先。


短刀を握る白い髪の少女。


「……え?」


頭の中で、全てが繋がっていく。


千夜雪音。


母方の旧姓、千夜。


そして。


一ノ瀬雪音。


「まさか……。」


輝夜の声が震える。


「千夜さんが……一ノ瀬雪音……?」


だが。


それだけではない。


一ノ瀬雪音は――男。


輝夜の目が大きく見開かれる。


「……じゃあ。」


今まで同じ寮で暮らしていた。


一緒に食事をした。


一緒に過ごした。


あの「千夜さん」は。


「……男の人……?」


言葉が出なかった。


その瞬間。


雪音がこちらへ振り向く。


「……!」


輝夜と目が合う。


雪音の表情が止まった。


「……輝夜。」


初めて。


学院で使っていた「千夜雪音」ではなく。


本当の名前で呼んでしまった。


輝夜は息を呑む。


雪音も理解する。


――バレた。


「……。」


二人の間に、戦場とは思えないほどの静寂が落ちた。


しかし。


「雪音!」


真昼の声が響く。


一輝が再び斬り込んできた。


「余所見するな!」


――キィンッ!!


雪音は咄嗟に短刀で受け止める。


輝夜はその場から動けない。


「……雪音……。」


目の前にいるのは。


自分がずっと「千夜さん」と呼んでいた少女ではない。


一ノ瀬組の若頭。


一ノ瀬の白夜叉。


そして――。


男だった。


輝夜は震える手を胸元へ当てた。


「……嘘。」


その呟きだけが。


戦場となった学院に静かに落ちた。

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