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第五十三話 「反旗」

天女学院。


学園祭最終日。


真昼は学院へ戻っていた。


何事もなかったかのように、生徒達は笑い合っている。


屋台。


催し物。


校舎に響く笑い声。


その光景を見つめながら、真昼は静かに息を吐いた。


「……」


父の命令。


守るべき場所。


その意味を考えていた。


「真昼。」


紫雲が歩み寄る。


「本当に大丈夫なの?」


真昼は少しだけ空を見上げた。


「分からない。」


「だが。」


「嫌な予感がする。」


その視線は、校門の向こうへ向けられていた。


⸻


一方。


漢江会本部。


広間には幹部達が整列していた。


最奥には、一人の男が座っている。


漢江会会長。


桐生院政井。


「一輝。」


政井が静かに口を開く。


「五条会と一ノ瀬組が争っている今、我々は静観する。」


「余計な動きはするな。」


その言葉に。


一輝は小さく笑った。


「……親父。」


「何がおかしい。」


「いや。」


一輝はゆっくり立ち上がる。


「もう遅い。」


「何?」


政井が眉をひそめた。


次の瞬間。


――ザンッ。


一筋の刃が走る。


「……っ!」


政井の胸から鮮血が溢れた。


「一……輝……。」


信じられないという表情のまま、その場へ崩れ落ちる。


広間が静まり返る。


誰も動けなかった。


一輝は血の付いた刀を軽く振る。


「俺の邪魔をする奴はいらない。」


静かな声だった。


しかし。


その声には狂気が滲んでいた。


「今日から。」


一輝はゆっくり振り返る。


「漢江会は俺が率いる。」


幹部達は互いの顔を見合わせる。


逆らえば死ぬ。


誰もが理解していた。


やがて、一人が膝をつく。


それに続くように、全員が頭を垂れた。


「会長……。」


一輝は満足そうに笑う。


「いい返事だ。」


刀を鞘へ納める。


「兵を集めろ。」


「向かうぞ。」


幹部の一人が恐る恐る尋ねる。


「……どちらへ。」


一輝の口元が大きく歪んだ。


「決まってるだろ。」


「天女学院だ。」


その瞳には、狂気にも似た熱が宿っていた。


「五条真昼。」


「ずっと待っていた。」


「今度こそ。」


「お前と命を懸けて殺し合える。」


笑みはさらに深くなる。


「愛してるよ。」


「真昼。」


その呟きを最後に。


漢江会の兵達が一斉に動き始めた。


学園祭の終わりは近い。


そして。


もう一つの戦いが、静かに幕を開けようとしていた。

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