第五十話 「若頭」
五条会本家。
白鞘と刀が激しくぶつかり合う。
――キィンッ!!
「……やはり強いな。」
雪影が呟く。
その表情には余裕があった。
「昔から変わらない。」
「五条真人。」
真人は答えない。
ただ静かに刀を構える。
「お前も。」
「一ノ瀬も。」
「ここまで来たか。」
二人の間に、長年積み重なった因縁があった。
その時。
⸻
天女学院。
学園祭最終日。
真昼は突然、足を止めた。
「……」
空気が変わった。
さっきまで感じていた違和感。
それが、確信へ変わる。
「真昼?」
紫雲が心配そうに見る。
「五条会本家で何か起きている。」
その言葉に、紫雲の表情が変わる。
「分かるの?」
「ああ。」
真昼は目を閉じる。
父の気配。
五条会の空気。
長くその世界にいたからこそ分かる。
「一ノ瀬か。」
静かに呟く。
⸻
その時。
一人の五条会組員が学院へ駆け込んできた。
「若頭!」
「大変です!」
真昼は振り返る。
「……報告しろ。」
「一ノ瀬組が……五条会本家を襲撃しました。」
周囲の空気が凍る。
紫雲達も息を呑む。
真昼はしばらく黙っていた。
そして。
「そうか。」
それだけだった。
怒りを露わにすることもない。
ただ静かに歩き出す。
「真昼……。」
紫雲が呼び止める。
真昼は振り返る。
「大丈夫だ。」
「俺は戻ってくる。」
短い言葉。
だが。
紫雲には分かった。
これは昔の真昼ではない。
ただ敵を殺しに行く顔ではない。
大切なものを守りに行く顔だった。
⸻
一方。
五条会本家。
雪影の一撃が真人へ迫る。
その瞬間。
真人は刀で受け止める。
「……。」
互いに一歩も譲らない。
そこへ。
「会長。」
側近が駆け込む。
「若頭がこちらへ向かっています。」
雪影の目が僅かに動く。
「……真昼か。」
真人は静かに目を閉じた。
「来る必要はないと言ったのにな。」
しかし。
どこか嬉しそうでもあった。
⸻
学院。
雪音はまだ知らない。
自分が追い続けてきた存在が。
今、自分の父と五条会の戦場へ向かっていることを。
そして。
この学園祭の日が。
自分の運命を変える一日になることを。




