↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
46/84

第四十七話 「包囲」

学園祭最終日。


天女学院では、祭りの熱気が未だ冷めることなく、多くの来客と生徒達で賑わっていた。


誰も知らない。


この平穏が、あと僅かで終わりを迎えようとしていることを。


⸻


その頃。



日本有数のヤクザ組織――五条会本家。


重厚な門構え。


長い石畳。


昼間とは思えないほど静まり返った屋敷を、無数の車がゆっくりと取り囲んでいく。


エンジンを切る音だけが静寂に響いた。


車の扉が開く。


次々と降り立つ一ノ瀬組の組員達。


刀を腰に差す者。


拳銃を懐へ忍ばせる者。


誰一人として無駄口は叩かない。


長年、この日のためだけに鍛えられてきた者達だった。


「東側、配置完了。」


「西側、異常なし。」


「裏門制圧完了。」


「逃走経路、全て封鎖しました。」


無線から次々と報告が流れる。


やがて。


一台の黒塗りの車の前で、その全てが止まった。


静かに後部座席の扉が開く。


一ノ瀬雪影がゆっくりと姿を現した。


黒い着物。


腰には一本の刀。


その鋭い眼差しは、真っ直ぐ五条会本家を見据えていた。


「……長かったな。」


誰に言うでもない呟き。


その視線の先にいるのは、一人だけ。


五条真人。


かつて五条の両翼とまで呼ばれた組。一ノ瀬組。


だが、その座に満足した日は一度もなかった。


「今日で終わりだ。」


雪影は静かに歩き出す。


組員達が左右へ道を開けた。


「組長。」


側近の一人が頭を下げる。


「各支部への襲撃部隊も、予定通り動いております。」


「ああ。」


「五条会は必ず対応に追われます。」


「本家の戦力も分散するかと。」


雪影は僅かに笑った。


「それでいい。」


「俺の目的は最初から一つだ。」


ゆっくりと屋敷を見上げる。


「五条真人。」


その名を口にした瞬間。


周囲の空気が張り詰めた。


「お前を越え。」


「一ノ瀬が頂点に立つ。」


静かな宣言だった。


だが、その声には長年積み重ねた執念が滲んでいた。


組員達は誰一人として口を開かない。


ただ黙って、組長の背中を見つめていた。


雪影は腰の刀へ手を添える。


「……始めるぞ。」


その一言で。


一ノ瀬組の組員達が、一斉に前へ踏み出した。


長年続いた主従関係。


その全てを断ち切る反乱が、今、幕を開けようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。