第四十四話 「最後の一日」
天女学院の学園祭。
最終日。
校舎にはまだ多くの人が残っていた。
生徒たちの笑い声。
来客たちの楽しそうな声。
普段は静かな学院が、今日は特別な熱気に包まれている。
「千夜さん、こっち手伝って!」
「はい、今参りますわ。」
雪音は返事をしながら、教室へ向かう。
以前の自分なら。
こんな騒がしい場所など、必要ないと思っていた。
誰かと笑い合うことも。
誰かと同じ時間を過ごすことも。
意味などないと思っていた。
しかし。
今は違う。
「千夜さん、本当に助かったよ。」
「あなたがいてくれて良かった。」
そんな言葉を向けられることが、不思議なくらい嬉しかった。
「……ありがとうございます。」
雪音は小さく微笑む。
⸻
その頃。
学院の別の場所。
真昼は静かに校内を歩いていた。
普段の着物姿。
しかし、その蒼い瞳は周囲を冷静に見ている。
「楽しそうですね。」
紫雲が隣で微笑む。
「あなたも少しは楽しめばいいのに。」
「……俺には似合わない。」
真昼はそう答える。
だが。
以前のような冷たい声ではなかった。
昼花が残した場所。
母が自分に人になれと言った場所。
ここで過ごす時間は、少しずつ真昼を変えていた。
⸻
その時。
学院の外。
一台の車が止まる。
「始めるぞ。」
男が呟く。
待ち続けた計画。
一ノ瀬組が動き出す。
そして。
この日。
天女学院で。
二人の運命が交わる。
五条真昼。
一ノ瀬雪音。
互いがまだ知らない因縁を抱えたまま。
二人は、同じ場所へ向かっていた。




