第四十話 「穏やかな時間」
「ご注文はお決まりでしょうか。」
雪音が五人の席へ歩み寄る。
「私は抹茶パフェ!」
乃亜が真っ先に手を挙げる。
「あと、みたらし団子も!」
「……乃亜。」
真昼が呆れたように見る。
「食べ過ぎじゃないか?」
「文化祭だもん!」
「こういう日は気にしないの!」
「太るわよ。」
赤城がさらりと言う。
「うっ……。」
乃亜の動きが止まる。
「でも食べる!」
「結局食べるのね。」
赤城は小さくため息をついた。
その様子を見て、茜と紫雲はくすくすと笑う。
「紫雲は?」
真昼が尋ねる。
「私はお抹茶と和菓子のセットをいただきます。」
「茜は?」
「私はあんみつで。」
「赤城は?」
「私はお茶だけで十分よ。」
「甘いもの嫌いだったか?」
「嫌いじゃないわ。」
「ただ、乃亜みたいに食べないだけ。」
「ひどっ!」
店内に笑い声が響く。
「真昼は?」
乃亜が身を乗り出す。
「俺は抹茶だけでいい。」
「えー。」
「相変わらず少食。」
「昔から変わらないね。」
真昼は肩をすくめるだけだった。
⸻
「かしこまりました。」
雪音は注文を書き終える。
「少々お待ちくださいませ。」
一礼し、厨房へ向かった。
「千夜さん。」
輝夜が小声で話しかける。
「あの五人、卒業生の人たちらしいよ。」
「そうなのですか。」
「なんか雰囲気あるよね。」
雪音は五人へ目を向ける。
楽しそうに笑い合う姿。
自然な距離感。
長い時間を共に過ごしてきたことが伝わってくる。
「仲の良い方々なのですね。」
雪音は小さく微笑んだ。
⸻
料理が運ばれてくる。
「お待たせいたしました。」
雪音は一品ずつ丁寧に並べていく。
「抹茶パフェでございます。」
「わぁ!」
乃亜の目が輝く。
「美味しそう!」
「熱いお茶ですので、お気を付けください。」
「ありがとうございます。」
紫雲が穏やかに頭を下げた。
雪音も一礼する。
「ごゆっくりお過ごしくださいませ。」
それだけ言うと、再び仕事へ戻っていく。
「礼儀作法が綺麗な方ですね。」
紫雲が静かに言う。
「ああ。」
真昼も頷く。
「所作に無駄がない。」
「お嬢様って感じだったね。」
乃亜も感心する。
「この学院らしい生徒だわ。」
赤城も紅茶を口に運ぶ。
その時だった。
店の外が少しだけ騒がしくなる。
「ん?」
乃亜が窓の外を見る。
「何かあったのかな?」
「文化祭だからでしょう。」
真昼は深く気に留めなかった。
まだ誰も知らない。
その騒ぎが。
これから始まる大きな事件の、ほんの前触れであることを。




