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第三十八話 「帰ってきた学院」

文化祭当日。


天女学院は朝から大勢の来場者で賑わっていた。


生徒たちの楽しそうな声。


校内を彩る装飾。


各教室から聞こえる笑い声。


その中で、和風喫茶の前に一人の少女が立っていた。


「いらっしゃいませ。」


千夜雪音。


白い髪を整え、上品な和装姿で接客をする彼女は、多くの人の目を引いていた。


「千夜さん、本当にすごいね。」


輝夜が笑う。


「接客も完璧だし、雰囲気もぴったり。」


「ありがとうございます。」


雪音は微笑む。


「皆様と準備してきた結果ですわ。」


以前の雪音なら、こんな風に誰かと協力して何かを作ることなど考えられなかった。


だが今は。


この学院で過ごす時間を、大切だと思えていた。


⸻


その頃。


天女学院の正門。


「……懐かしいですね。」


五条紫雲は校舎を見上げていた。


隣にいるのは、彼女の婚約者。


五条真昼。


黒髪のボブ。


青い瞳。


一見すると少女にも見える美しい容姿。


しかし、その瞳には確かな意志が宿っている。


「ここに来るのも久しぶりだな。」


真昼が呟く。


「はい。」


紫雲は優しく微笑む。


「私たちが出会った場所ですから。」


真昼は少し笑った。


「そうだな。」


最初はただの秘密を共有する関係だった。


女装して学院に通っていた真昼。


それを最初に見抜いた紫雲。


友達になることを条件に、彼の秘密を守った。


そこから始まった関係。


今では、誰よりも大切な存在になっていた。


⸻


「真昼ー!」


元気な声が響く。


「相変わらず先に行くんだから!」


柊乃亜が駆け寄ってくる。


「乃亜は変わらないな。」


「何それ!」


乃亜は笑う。


幼い頃から真昼と共に過ごしてきた幼馴染。


真昼の女装や学院での振る舞いを支えたのも彼女だった。


「でも……。」


乃亜は校舎を見る。


「やっぱり懐かしいね。」


「あの頃、毎日楽しかったし。」


⸻


「朝から騒がしいと思ったら。」


桐生院赤城が姿を見せる。


「赤城。」


「久しぶりね。」


赤城は真昼を見る。


「……変わってないわね。」


「そうか?」


「そうよ。」


生徒会長として厳しかった彼女。


しかし真昼の前では、少しだけ素直になる。


「まあ……来てよかったとは思ってるわ。」


⸻


「皆さん。」


古賀茜が静かに歩いてくる。


「この場所を見ると、絵を描き始めた頃を思い出します。」


真昼は微笑む。


「今も描いているのか?」


「はい。」


茜は小さく頷く。


「ここで見つけた大切なものですから。」


⸻


四人と真昼。


そして紫雲。


それぞれに違う思い出がある。


けれど、この学院が大切な場所であることだけは同じだった。


「行きましょう。」


紫雲が真昼の隣で微笑む。


「今日は楽しみましょう。」


「ああ。」


真昼たちは校舎へ入っていく。


⸻


その頃。


雪音は廊下を歩いていた。


次の仕事へ向かう途中。


角を曲がった瞬間。


一人の少年とすれ違う。


黒髪。


青い瞳。


少女と見間違えるほど整った顔立ち。


雪音は思わず足を止めた。


(……綺麗。)


真昼もまた振り返る。


(……。)


互いに、言葉にはできない違和感を覚える。


まだ二人は知らない。


この出会いが。


やがて避けられない戦いへ繋がることを。

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