第三十三話 「決意」
水曜日。
昼休み。
「雪音さん!」
今日も輝夜は笑顔で雪音の席へやって来た。
「お昼、一緒に食べよ!」
「ええ。喜んで。」
雪音は微笑み、輝夜、美羽、皐月と中庭へ向かう。
「もうすぐテストですね。」
美羽が少し不安そうに呟く。
「うぅ……勉強したくない。」
輝夜が机に突っ伏す真似をすると、皐月がくすりと笑った。
「西ノ宮さんは毎回そう言ってますよね。」
「でも何とかなるんだもん!」
「それは運が良いだけでは……?」
雪音が小さく笑う。
「雪音さん、笑った!」
「最近、本当によく笑うね。」
輝夜の何気ない一言に、雪音は少し照れたように目を逸らした。
「皆さんと過ごす時間が、とても楽しいものですから。」
その言葉に、三人は嬉しそうに笑った。
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放課後。
雪音は一人、音楽室へ向かう。
誰もいない教室でバイオリンを構える。
ヴィヴァルディ『四季』――冬。
静かな旋律が校舎に響く。
演奏を終えると、小さな拍手が聞こえた。
「とても綺麗でした。」
振り返ると、そこには理事長・春野薫が立っていた。
「理事長。」
「ごめんなさいね。聴き入ってしまって。」
薫は穏やかに微笑む。
「あなたは、この学院にはもう慣れたかしら?」
雪音は少し考えたあと、静かに頷いた。
「はい。」
「皆さん、とても良くしてくださいました。」
「そう。」
「それなら良かった。」
薫はそれだけ言うと、音楽室を後にした。
雪音はその背中を見送りながら、小さく息を吐く。
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その頃――。
一ノ瀬組本部。
「組長。」
幹部が部屋へ入る。
「各支部への連絡、すべて完了しました。」
「兵の配置も問題ありません。」
雪影は静かに頷く。
「ご苦労。」
幹部が続ける。
「若頭には、まだお伝えしなくてよろしいのでしょうか。」
雪影は窓の外へ視線を向けた。
「まだだ。」
「雪音は学院での役目を果たせばいい。」
「すべては学院祭の日。」
「その日が来れば、あいつも嫌でも知ることになる。」
幹部たちは黙って頭を下げた。
雪影は静かに呟く。
「長かった。」
「だが、もう終わる。」
「一ノ瀬が五条を越える日が来る。」
雨雲が空を覆い始めていた。
まるで、近づく嵐を知らせるかのように。




