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第三話 「生徒会長」

翌日。


昼休み。


「雪音さん!」


教室で昼食の準備をしていた雪音に、輝夜が手を振った。


「一緒に食べよ!」


「はい。」


雪音は弁当箱を持ち、輝夜の席へ向かう。


「いただきます。」


二人が食べ始めた、その時だった。


教室の扉が開く。


「失礼します。」


落ち着いた声。


教室中の視線が集まる。


茶色の髪をポニーテールにまとめた女子生徒が立っていた。


「生徒会長!」


誰かが小さく呟く。


藤田皐月。


天女学院三年。


生徒会長だった。


「千夜雪音さん、いらっしゃいますか?」


雪音は立ち上がる。


「私ですが。」


皐月は柔らかく微笑んだ。


「少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」


「構いません。」


「雪音さん?」


輝夜が首を傾げる。


「すぐ戻ります。」


雪音は皐月の後について教室を出た。


⸻


生徒会室。


「どうぞ、お掛けください。」


皐月がお茶を差し出す。


「ありがとうございます。」


雪音は丁寧に受け取った。


皐月は向かいへ座る。


「転入初日から評判ですよ。」


「そうなのですか。」


「ええ。」


皐月は笑う。


「礼儀正しくて、綺麗な方だと。」


雪音は少しだけ困ったように微笑む。


「恐縮です。」


「ふふ。」


皐月は優しい笑みを浮かべる。


「今日はご挨拶がしたかっただけなんです。」


「何か困ったことがあれば、生徒会を頼ってくださいね。」


その言葉に。


雪音は少し驚いた。


「……頼る。」


小さく呟く。


「はい?」


「いえ。」


雪音は首を振る。


「ありがとうございます。」


誰かを頼る。


そんな考えは、雪音にはなかった。


幼い頃から。


「一人でやれ。」


「弱音を吐くな。」


そう育てられてきたからだ。


⸻


教室へ戻る途中。


「雪音さーん!」


輝夜が廊下を走ってきた。


「もう、お腹空いちゃったよ!」


「申し訳ありません。」


「謝らなくていいよ。」


輝夜は笑う。


「はい、お弁当!」


雪音の机には、昼食がそのまま残されていた。


「ありがとうございます。」


二人は席に座る。


「いただきます。」


その様子を、クラスメイトたちは微笑ましく見守っていた。


⸻


放課後。


寮へ戻る途中。


「今日は楽しかった?」


輝夜が尋ねる。


雪音は少し考えた。


「……はい。」


その一言だけだった。


だが。


それを聞いた輝夜は嬉しそうに笑う。


「ならよかった!」


雪音はその笑顔を見つめる。


不思議だった。


一緒にいるだけで。


心が少しだけ軽くなる。


そんな感覚は。


今まで一度も知らなかった。

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