↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
28/84

第二十九話 「狂気の観察者」

夜。


とある倉庫。


薄暗い室内に、数人の男たちが集まっていた。


その中央。


椅子に座る一人の男。


桐生院一輝。


「……白い髪の男、か。」


部下から渡された報告書を眺める。


「一ノ瀬組の若頭。」


「学院では別人のように振る舞っている。」


一輝は口元を歪める。


「面白いな。」


「若いくせに二つの顔を持っている。」


部下が尋ねる。


「どうされますか?」


一輝は報告書を机へ置いた。


「まだ手を出すな。」


「……。」


「俺が興味があるのは、そいつじゃない。」


一輝の目が鋭くなる。


「五条真昼だ。」


部下たちは黙る。


「奴は必ず現れる。」


「俺が動けば。」


「必ずな。」


一輝は楽しそうに笑った。


⸻


翌日。


天女学院。


昼休み。


「雪音さん。」


美羽が声を掛ける。


「最近、少し疲れていませんか?」


雪音は一瞬だけ驚く。


「……そう見えますか?」


「はい。」


美羽は小さく頷く。


「無理をしているように見えます。」


雪音は何も言えなかった。


自分では隠しているつもりだった。


だが。


近くにいる人間には、少しずつ伝わっていた。


「大丈夫です。」


いつもの言葉。


しかし。


輝夜は少し困った顔をする。


「雪音さん。」


「またそれ。」


「大丈夫って言うけど。」


「本当に大丈夫な人は、そんな顔しないよ。」


雪音は黙る。


⸻


放課後。


雪音は寮へ戻る途中、違和感を覚えた。


誰かに見られている。


以前感じた視線。


しかし今回は。


明確な殺気ではない。


「……。」


雪音は立ち止まる。


だが、周囲には誰もいない。


⸻


その頃。


遠くの車内。


一輝の部下が双眼鏡を下ろす。


「確認しました。」


「一ノ瀬雪音。」


「間違いありません。」


通信機の向こうから声が返る。


「そうか。」


一輝だった。


「なら、そのまま見ていろ。」


「白夜叉がどれほどの男なのか。」


「そして――」


一輝は笑う。


「五条真昼が動く理由になるのか。」


通信が切れる。


⸻


夜。


雪音は部屋でバイオリンを弾いていた。


ヴィヴァルディ『冬』。


静かな音色。


しかし。


その裏側では。


一人の男が、戦いの舞台を作り始めていた。


まだ雪音は知らない。


この視線の先にいる男が。


やがて天女学院を巻き込む大事件を起こす存在だということを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。