↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/84

第二十八話 「一ノ瀬の影」

数日後。


天女学院。


昼休み。


「最近、雪音さん忙しそうだね。」


輝夜が弁当を食べながら言った。


「そうでしょうか。」


「うん。」


「放課後すぐ帰る日が増えたし。」


雪音は少し黙る。


「家の用事です。」


「そうなんだ。」


輝夜はそれ以上聞かなかった。


雪音が話したくないことを無理に聞かない。


それが、少しずつ築いてきた関係だった。


⸻


放課後。


雪音は一ノ瀬組本部へ向かっていた。


「若頭。」


組員が頭を下げる。


「報告があります。」


雪音は足を止める。


「先日の港の件ですが。」


「敵対組織の背後に、別の動きがあります。」


雪音は眉を僅かに動かす。


「別の動き?」


「はい。」


「単なる護衛対象への襲撃ではありませんでした。」


「目的は……若頭の確認だった可能性があります。」


雪音は黙って考える。


自分が狙われた。


つまり。


『白夜叉』の存在を探っている者がいる。


⸻


組長室。


「父上。」


雪影は書類から顔を上げる。


「聞いたか。」


「はい。」


「敵は動き始めた。」


雪影は窓の外を見る。


「五条は今、表向きは何も変わっていない。」


「だが。」


「いつまでも頂点にいるつもりなら間違いだ。」


雪音は静かに聞いていた。


「一ノ瀬は五条の両翼と呼ばれてきた。」


「しかし。」


雪影は拳を握る。


「いつまでも下にいる理由はない。」


「……。」


「雪音。」


「お前には、そのための力を与えてきた。」


雪音は目を伏せる。


「承知しております。」


「必ず、一ノ瀬の名を頂点へ。」


⸻


その夜。


雪音は一人、部屋でバイオリンを弾いていた。


ヴィヴァルディ『四季』。


冬。


冷たい旋律が部屋に響く。


だが。


演奏を終えた後。


雪音は窓の外を見る。


学院で笑う輝夜。


ピアノを弾く美羽。


声を掛けてくれる皐月。


そして。


父から与えられた使命。


「……。」


自分は何のために強くなるのか。


一瞬だけ、そんな疑問が浮かぶ。


⸻


翌日。


一ノ瀬組へ一つの報告が届く。


「組長。」


「天女学院周辺で、不審な者を確認しました。」


雪影は静かに目を細める。


「そうか。」


「ならば、こちらも動く時期かもしれんな。」


その言葉を。


雪音はまだ知らなかった。


一ノ瀬の野望が。


少しずつ学院へ近づいていることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。