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第二十三話 「それぞれの日常」

月曜日。


朝。


「おはよう、雪音さん!」


教室へ入ると、輝夜がいつものように笑顔で声を掛けてきた。


「おはようございます。」


「昨日は何してたの?」


「実家へ戻っておりました。」


雪音は穏やかに答える。


「そっか!」


「私は一日中寝ちゃってた!」


「休みの日くらいゆっくりしようと思ったら、お昼過ぎだったよ。」


「ふふっ。」


雪音は思わず笑みをこぼした。


「笑った!」


輝夜は嬉しそうに指を差す。


「最近よく笑うようになったね。」


雪音は少しだけ照れたように目を逸らす。


「……そうでしょうか。」


「うん!」


「最初はすっごく近寄りがたい美人って感じだったけど。」


「今はちゃんと笑ってくれるもん。」


その言葉に、雪音は何も答えなかった。


ただ、少しだけ嬉しかった。


⸻


昼休み。


中庭。


「いただきます。」


三人はいつものように昼食を囲む。


「雪音さん。」


美羽が口を開く。


「もうすぐ六月ですね。」


「はい。」


「梅雨になりますね。」


輝夜は少し嫌そうな顔をする。


「雨は嫌だなぁ。」


「洗濯物乾かないし。」


「西ノ宮さんらしいですね。」


雪音が穏やかに言う。


「え?」


「生活感があります。」


その言葉に、美羽が吹き出した。


「ふふっ。」


「確かに。」


「二人まで!」


輝夜は頬を膨らませる。


三人の笑い声が中庭に響いた。


⸻


放課後。


音楽室。


美羽がピアノを弾いている。


雪音はその隣で静かに耳を傾けていた。


演奏が終わる。


「どうでしょうか。」


「前回より安定しています。」


「特に中盤は、とても良かったです。」


「本当ですか?」


美羽の表情が明るくなる。


「ありがとうございます。」


「雪音さんに褒めてもらえると、自信になります。」


雪音は少し困ったように笑った。


「私は思ったことを申し上げただけです。」


⸻


その頃。


一ノ瀬組本部。


「組長。」


部下が部屋へ入る。


「若頭の件でございます。」


雪影は静かに目を開いた。


「学院では順調に過ごしているようです。」


「友人にも恵まれているとか。」


雪影は何も言わない。


静かに報告書を閉じる。


「……まだいい。」


「今は泳がせておけ。」


「はっ。」


部下が部屋を後にする。


雪影は窓の外を眺め、小さく呟いた。


「雪音。」


「お前が何を得るのか。」


「見届けてやろう。」


その瞳には。


父親の優しさではなく、組を率いる男としての冷徹さだけが宿っていた。

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