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第二十話 「穏やかな日々」

五月下旬。


天女学院。


昼休み。


「雪音さん!」


輝夜がいつものように雪音の席へやって来る。


「今日は中庭で食べよう!」


「はい。」


雪音は弁当を持ち、三人で中庭へ向かった。


木陰のベンチに腰掛ける。


風が心地よく吹き抜けていく。


「最近、暖かくなってきたね。」


輝夜が空を見上げる。


「もうすぐ六月かぁ。」


「時間が経つのは早いですね。」


雪音が静かに答える。


美羽も頷いた。


「入学したばかりだと思っていたのに。」


「本当ですね。」


⸻


食事を終えた後。


「そういえば。」


輝夜が雪音を見る。


「雪音さんって休日は何してるの?」


「読書。」


「料理。」


「掃除。」


「バイオリン。」


簡潔な返事。


輝夜は苦笑した。


「真面目すぎるよ。」


「もっと遊ぼうよ。」


雪音は少し考える。


「遊ぶ……。」


今まで縁のなかった言葉だった。


「皆さんと過ごす時間は。」


「十分楽しいですよ。」


その一言に。


輝夜は思わず笑顔になる。


「そう言ってもらえると嬉しいな。」


美羽も優しく微笑んでいた。


⸻


放課後。


雪音は寮の共同キッチンで夕食を作っていた。


包丁の音が一定のリズムで響く。


そこへ。


「いい匂い……。」


輝夜が顔を覗かせる。


「こんばんは。」


「こんばんは。」


「今日は何作ってるの?」


「肉じゃがです。」


「また美味しそう……。」


輝夜は鍋を覗き込み、目を輝かせる。


「少し作りすぎました。」


「よろしければ、一緒に召し上がりますか?」


「本当!?」


「もちろん!」


ちょうどそこへ、美羽もやって来た。


「私もお邪魔してもいいですか?」


「はい。」


三人は共同キッチンのテーブルを囲み、手作りの夕食を楽しんだ。


「美味しい!」


「本当にお店みたい。」


雪音は少し照れたように笑う。


「ありがとうございます。」


⸻


夜。


自室。


雪音は机に向かい、今日一日を思い返していた。


学院へ来る前は。


誰かと食事をすることも。


笑い合うことも。


当たり前ではなかった。


「……。」


窓の外には月が浮かんでいる。


穏やかな日々。


その日々が。


雪音の心を少しずつ変え始めていた。

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