第十九話 「放課後の音楽室」
放課後。
チャイムが鳴り、教室は帰り支度をする生徒たちで賑わっていた。
「雪音さん。」
美羽がおずおずと雪音の席へやって来る。
「はい。」
「もしお時間がありましたら……。」
「今日、音楽室へ来ていただけませんか?」
「新しく練習している曲を聴いてほしいんです。」
雪音は静かに頷いた。
「喜んで。」
「やった!」
横で聞いていた輝夜も笑顔になる。
「私も行く!」
⸻
音楽室。
美羽はピアノの前に座る。
「まだ途中なんですけど……。」
「お願いします。」
雪音と輝夜は椅子に腰掛けた。
美羽は深呼吸をし、鍵盤へ指を置く。
静かな旋律が音楽室を包む。
演奏はまだ完璧ではない。
それでも、一音一音に想いが込められていた。
演奏が終わる。
「どうでしたか……?」
少し不安そうに尋ねる美羽。
雪音は少し考えてから答えた。
「とても素敵でした。」
「ですが。」
「右手が少し急いでしまう箇所があります。」
「そこだけ落ち着いて弾けば、もっと綺麗になります。」
美羽は何度も頷く。
「ありがとうございます。」
「そこが自分でも気になっていました。」
輝夜は感心したように雪音を見る。
「すぐ分かるんだね。」
「私は全然分からなかった。」
雪音は少し照れたように微笑んだ。
「長く音楽に触れておりますので。」
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「雪音さんも何か弾いてよ!」
輝夜が期待した目で言う。
雪音は少し迷ったあと、自分のバイオリンケースを開いた。
「少しだけ。」
静かに弓を構える。
美羽はピアノへ座り直した。
「もしよろしければ……。」
「伴奏してもいいですか?」
雪音は少し驚いたあと、微笑む。
「ぜひ。」
二人は目を合わせる。
音が重なる。
バイオリンとピアノ。
音楽室いっぱいに、美しい旋律が響き渡る。
演奏が終わると。
パチパチパチ。
輝夜が大きな拍手を送った。
「すごい!」
「二人とも息ぴったり!」
美羽は少し照れながら笑う。
「雪音さんのおかげです。」
「いえ。」
「美羽さんの伴奏があったからです。」
その言葉に、美羽は嬉しそうに微笑んだ。
⸻
寮への帰り道。
「今日はすごかったなぁ。」
輝夜は何度も感動した様子で話す。
「また二人の演奏、聴きたい!」
「機会があれば。」
雪音は穏やかに答える。
春の夕暮れ。
三人はゆっくりと寮への道を歩いていく。
そんな穏やかな日々は。
まだしばらく続くように思えた。




