第十七話 「四人の休日」
中間テストが終わった最初の土曜日。
朝。
女子寮のロビー。
「雪音さん、おはよう!」
輝夜が手を振る。
「おはようございます。」
雪音が一礼すると、その隣へ美羽もやって来た。
「おはようございます。」
「おはようございます、美羽さん。」
そこへもう一人。
「皆さん、お待たせしました。」
藤田皐月だった。
「生徒会のお仕事が終わいたので、ご一緒させていただきますね。」
「もちろんです!」
輝夜が笑顔で答える。
今日は四人で街へ出掛ける約束をしていた。
⸻
駅前。
「まずはどこ行く?」
輝夜が地図を広げる。
「私は本屋さんに行きたい!」
美羽が小さく手を挙げる。
「私は楽譜を見たいです。」
雪音も静かに答えた。
「それなら駅ビルなら全部ありますよ。」
皐月が案内する。
四人は駅ビルへ向かった。
⸻
書店。
雪音は音楽コーナーへ。
美羽はピアノの楽譜を眺めている。
「この曲、好きなんです。」
美羽が一冊の楽譜を見せる。
「いつか弾けるようになりたくて。」
雪音は優しく微笑む。
「美羽さんなら弾けます。」
「焦らず続ければ、きっと。」
「ありがとうございます。」
美羽は嬉しそうに笑った。
⸻
一方。
料理本コーナーでは。
「うーん……。」
輝夜が何冊も手に取って悩んでいた。
「全部難しそう……。」
皐月が隣で笑う。
「初心者向けと書いてあるものから始めてみてはいかがでしょう。」
「なるほど!」
輝夜は一冊を選び、満足そうに頷いた。
⸻
昼食。
四人は和食屋へ入る。
「いただきます。」
食事をしながら、他愛のない話で盛り上がる。
「雪音さん。」
皐月が微笑む。
「学院生活には慣れましたか?」
「はい。」
「皆様のおかげで、毎日楽しく過ごしております。」
その答えを聞き、輝夜と美羽も嬉しそうに笑った。
⸻
帰り道。
夕日が街を赤く染める。
「今日は楽しかったね!」
輝夜が満足そうに伸びをする。
「はい。」
雪音は静かに頷いた。
学院へ来るまでは。
休日を誰かと過ごすことなど、一度もなかった。
そんな自分が。
今は自然と笑っている。
その変化に。
雪音自身もまだ気付いていなかった。
そして遠く離れた一ノ瀬組本部では。
雪影が静かに学院からの報告書を閉じる。
「……楽しそうだな。」
その目に浮かぶ感情は、決して父親の温かさではなかった。
「雪音。」
「お前は何をしに学院へ行かせたのか……忘れてはいないだろうな。」
穏やかな日常の裏で。
静かに、不穏な影が動き始めていた。




