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問:兄が自害したので家督を引き継いだ瞬間に歴オタだった前世の記憶がよみがえり、詰んでる事を理解してしまった私、朝倉景恒の心境を答えよ  作者: 麺樽豆腐
第一部 歴史改変への道

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答26:今この場にいられると非っ常に!やり辛いんですよねぇ。

永禄12(1569)年1月中旬、近江国浅井郡 小谷城


「わ、凄く綺麗なひと」


「ふふ、ありがとうございます。貴女もかわいらしいですのに」


 ゆきがお市の方の美しさに感嘆の声を漏らすと、お市の方はふんわりと微笑みを返す。


 流石、戦国一の美女と評されるだけはありますね。

 織田一族ゆかりの妖しき美しさに加え、実父・信光粛清後に重ねた苦労から来るのであろう陰のある儚さ。


 その上で備前殿へ向ける眼差しに、夫への一途さ、何処までもついて行く覚悟がにじみ出ている。


 あー羨ましいですねぇ!そのうえ下野殿がこの場に出している以上、政略・軍略に疎いということもないでしょうし。

 史実では将来、備前殿が魔王を裏切った後も離縁せずにいたのもわかりますよ。


 たぁだ!!今この場にいられると非っ常に!やり辛いんですよねぇ。


 戦国の習いとして、政略結婚の嫁および付き従う侍女たちは、実家のスパイとして活動するものなんです。


 つまり、ここで私が下手を打って目立てば、めでたく()()()()()()()()()わけですよこれが。


「奥方がこの場に居る、ということはここでの話が織田殿に()()()()流れる、と解釈しても?」


「構わぬ。国衆風に言えば我が浅井家は織田・朝倉に両属している訳だからな。

 義理を欠くわけにはいかぬのよ」


 いけしゃあしゃあとよく言いますよ。どちらにも従っているつもりなどないくせに。


 まぁ、良いんですがね。私としては従わせて一方的にこちらの都合を押し付けるやり方は好みませんから。


 相手にも意思と都合があるということは忘れがちですが大事なことです。人を自分の思い通りにできると無邪気に考えることは私には出来ません。


 ()()()()()()というのが思いの外大事なんですよ、人間にはね。

 それをねじ伏せて己の意に添わぬ行動をさせないためには、赤子をあやすように微に入り細を穿ち手を掛け気を回し一切の不満を()()()()必要があります。


 それをせずただ従わせている例は多々ありますが、まぁ高確率で一番イヤなタイミングで裏切られますね。

 面倒くさすぎる?そうです。だから自分の意思で従ってもらうようにするんですよ。

 相手に取って自分に従うのが合理的であると思わせれば、その状況が続く限りは信用できるというわけですね。


 その状況を作るのも面倒くさい?ならば殺しなさい。

 中途半端はいけません。あなたに必ず仇なします。

 ほら、よく言うでしょう?良いインディアンは死んだインディアンだけだって。


 一番愚かなのは、相手を見ず殺しもせず「従っているはずだ」と思い込むことですよ。

 ま、ありふれた話ですけどね。あの魔王(織田信長)でさえこの罠に何度もハマり最終的には本能寺されたわけですから。


「では私にできることは、今後の打ち手を仮定した上で、その影響・展開を分析する。というところでしょう」


「え?助言などは・・・」


 備前殿が呆気に取られた声を上げましたが、側に控えていたお市の方に袖を引かれて動きを止めました。


「新九郎様、いけませぬ。朝倉様にも御立場がございますれば」


「そうだ猿夜叉丸。中務殿が踏み込んだ助言をしたとしよう。それを受けても蹴っても軋轢が残るのだぞ。

 彼我の立場を考えての行動よ。有難く思いこそすれ、期待外れだ等と考えてはならぬ」


 私がこうした方が良いと助言したとしても、あくまで私視点での話でしかありません。

 助言を受ける側に私の知らない事情があれば、的外れなものとなる可能性もあるのです。


 そんな助言を鵜呑みにして悪い結果となれば、当然私への不信にも繋がります。

 逆に退ければ退けたで、今度は私の面目を潰すことになる訳で。


「まぁ、そういうわけです。あくまでも私は選択肢を提示するのみ。決断と実行は浅井家が行ってください」


「うむ、感謝する。

 そういう訳だ猿夜叉丸。決断は当主たる貴様の仕事ぞ」


 備前殿が重圧を感じた顔をしていましたが、お市の方に手を握られることで落ち着きを取り戻しました。

 ・・・リア充、爆発すれば良いのに。


「彦四郎。変な事考えてないで話を進めて」


 アッハイ。


「では、まずは幕府からの要請、実質的な坂田郡差し出しについて考えていきましょうか。

 打ち手は三通り、受け入れるか蹴るか、それとも面従腹背か。

 まずは蹴る場合。幕府との関係が悪化します。そして織田殿の調停が入り、それでも折れないとなれば・・・織田殿を中心とした討伐軍が組まれるでしょう。

 最低でも美濃尾張から三万弱、これに対抗する為には六角と和睦し南近江、伊賀甲賀から一万と少々、江北で五千、越前から一万をかき集めて関ヶ原で決戦に及ぶ必要があります。

 数の上では劣勢ですが守りの戦です。戦上手の備前殿ならばしのぐ事は可能でしょう。

 従って六角並びに朝倉をいかにして説き伏せるかが要になるかと」


 そこまでやっても魔王相手ですし勝てる見込みが薄いのが厳しい所ですが。

 とは言え織田家からすれば他国の為の戦、自分の利が一切ない状態で損害を出すのは許容できないでしょうから、上手くやれば和睦出来るでしょう。


「なるほど、良い手筋だ。六角朝倉が素直に我らの指揮に従うという無理筋に目を背ければな」


 ですよね~。

 備前殿だけは真面目に戦への立ち回りに思いを向けて居ますが、下野殿のみならずお市の方も首を横に振っています。


「次、素直に受け入れる場合。以降の方針を選択する必要が出てきます。

 大名の地位を諦め、国衆として北近江に閉塞するか、織田以外の隣国に進出して活路を(ひら)くか」


「え?織田家以外の隣国って朝倉家しか・・・」


 そうですよ備前殿。あくまで浅井家の立場から考えているのですから、当然選択肢には入ってきますからね。


「ふむ、こちらも悪くないな」

「父上!?」

「無論、その場合はここにいる塩津浜泥棒殿を調略して、我らは北国街道から一乗谷を目指すことになる。この腹黒盗っ人を説き伏せられるかが要ということよ」


 ふふふ、私がそちらに(くみ)する利と従わせる貫目をしっかり用意してからお声掛けくださいね。


「では最後に面従腹背について。

 この場合まずは江北国衆の大幅な異動、国替えに着手する必要があります」


「浅井家に忠実な国衆を伊香郡・浅井郡に。逆に反抗的な者を坂田郡に国替えの上、京極様に坂田郡をお渡しする。

 その結果、残った浅井家の家中統制がやりやすくなるのですね?」


 備前殿が理解しきれないと顔に出たのを察して、お市の方が声を上げる。いや本当この夫婦、末永く爆発しろ下さい。


「はい、そういう事です。その上で近江守護の直臣となれると坂田郡国衆を煽った上で引き渡す。これで坂田郡は京極様の元で一旦は統制が取れるでしょう。

 しかし、北近江・西近江はともかく南近江は泥沼です。具体的には六角家の抵抗が続いている、というか未だ南近江は六角領です。

 本拠である観音寺城が落ちた程度で彼らが滅ぶなら歴代公方様も苦労はしません」


 備前殿と下野殿がげんなりと同じ顔をしているのが面白い。武闘派と政治屋という属性が違っても、やはり親子なのですねぇ。


「いずれ京極様の近江支配はほころびが生じ、繕うための負担が坂田郡にのしかかる。

 ここで改めて坂田郡の国衆に調略の手を伸ばし、京極浅井の両属体制を構築し直す。なに、公方様上洛前と同じ状況なのですからそこまで難易度は高くありません。

 ――そして、六角による観音寺城奪還を待つ」


 京極様には申し訳ありませんが織田家が介入しない限りこの場合の流れはほぼ確定でしょう。


「で、義兄者と共に六角を討ち果たす訳ですな!」


「猿夜叉丸。してその後は?それでは南近江は織田領、北近江に閉塞する状況は変わらぬ」


 下野殿がため息と共にこぼす。


「その場合は改めて越前を狙えば良いとして、その前にひとつ博打を張る事が出来ます」


「博打・・・でござるか」


 備前殿のみならず下野殿とお市の方も怪訝な顔を隠せない。


「えぇ、浅井家の指揮下で集められるだけの手勢を集めておき、京極様が観音寺城から叩き出された直後、観音寺城入城前の六角承禎入道を強襲して首を挙げるのです。できれば現当主・義治も同時に。

 いかな六角家といえど、当主と本拠地を同時に喪った例は過去にもありません。ふたつの求心力を同時に失えば崩壊は免れ得ぬでしょう。

 そうすれば名目上、京極様を担ぎ上げて実権は浅井家が握る形で近江統一が成る。

 どうです?備前殿好みの展開でしょう?」


「・・・坂田郡の防衛・鎮撫名目で佐和山城に手勢を集結。

 観音寺城にて京極様が討たれれば首実検、逃れれば捜索。

 いずれにしても一日は潰れる。その間、平定が済んでいない城には入らず本陣はそのまま・・・

 佐和山から観音寺まではひと晩あれば十分・・・いける!!」


 うわ怖。戦術の話になった途端にこの反応、野良田から続く戦上手は伊達ではないですねぇ。

 戦の現場はからきしな私ではどこまで妥当な戦術案なのかは理解できませんが、備前殿がここまで自信を持っていけると言うなら、勝算は十分にあるのでしょう。


「ま、まぁこれで三通りの仮定と分析は開示しました。

 どのような選択肢を選ぶかには私は関知しません。浅井家の皆様でお決め下さい。

 では、次の問題に移りましょう」


「次、でござるか?」


 そうです。私にとってはこちらが本題ですから。


「三案いずれを選ぶにせよ、避けて通れない課題があります。

 それは浅井家の国力増強です。

 坂田郡を一旦手放すか、幕府軍と直接対峙するか。どちらであっても必要でしょう?」


「成る程、道理だ。浅井が豊かで強大であれば切れる手札も多くなる」


 下野殿も備前殿も納得していただいたようですね。

 では、敦賀を中心とした経済圏に参加する案を提示するとしましょうか。


悩んだタイトル案候補w:末永く爆発しろ下さい。



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読んでいただきありがとうございます。


よろしければブックマーク・★評価・感想等お願いいたします。


・・・メンタル作者名どおりなんでお手柔らかだと嬉しいです。


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