答25:観音寺城の陥落、何年ぶり何回目ですか?
永禄12(1569)年1月中旬、近江国浅井郡 小谷城
「わざわざ御足労いただき感謝いたす。朝倉殿」
浅井備前殿が丁寧に礼をしてきました。
かなり憔悴した様子。
「いえいえ、隣人として当然のことです。
私にできることであれば協力は惜しみません」
若狭の問題も粗方解決しましたし、少しなら余裕ありますから。
「安請け合い駄目。浅井様は他家、それも大名。若狭みたいには出来ない」
若狭は一国丸ごとなんですがそれは。
まぁ規模で言えば江北の浅井家は若狭の倍はありますけど。
「ゆき殿、心配は要らん。借りたいのは知恵だけよ。今のところは、な」
浅井下野殿が静かに語る。
「我ら浅井は江北に根ざす地侍、外からはその程度に映っておる。つまりはちょっと大きめな国衆よ、高島七頭と大差あるまい。
扱いが如実に示しておるわ、六角も、幕府も、織田もな」
備前殿の悔しそうに噛みしめた口を横目にしながら、下野殿は言葉を続ける。
「無論、朝倉家もな。一乗谷に屋敷を用意せよ、等とおよそ大名に対する扱いを心得ているとは思えぬ事を言う。
ま、武田孫犬丸殿のことを思えば、アレが朝倉家の常識だ、という疑惑は残るが」
それを言われると弱いですね。
私の頭がおかしいのはもう諦めるとして、長く越前に君臨した朝倉家は同格との付き合い経験等無いですから。六角?アレ管領代ですよ、格上です。
「京極は近江を出ていったわ。近江一国守護として在京する為にな。
妻子はここに置き去りよ。その上で北近江の国人共に儂らではなく京極に直接従えと言ってきおる。
これについては幕府・織田からの指示だ。近江は古き良き名門に委ねるとな。
結果、佐和山をはじめとした坂田郡は手放せと言うことよ」
「それは・・・率直に言って、舐められてますねぇ」
私が呆れ混じりにこぼせば、下野殿は苦笑、備前殿は屈辱にそれぞれ歪みました。
「まぁな、京極の爺様は青ざめて儂に妻子のことを託していったわ。どうせ直ぐ崩壊して責任を取らされるとな。儂らより哀れよ。
・・・ふん、ここまでくればいっそのこと従ってみるのも一興か」
「父上!何を!?」
備前殿が慌てて声を上げるが、下野殿は宥めるように語る。
「失敗が目に見えておるというのは他人事ならばよい娯楽と言うことよ猿夜叉丸。
鑑賞料に坂田郡は高すぎるが、幕府との手切れ金と考えれば我慢の範囲内であろうて。
織田殿も坂田郡、いや不破の関から今浜までの交易路が安定すれば文句もあるまい・・・安定すればな」
「京極殿の元で近江一国の平穏を志向。浅井家は国衆として伊香郡浅井郡を命令通り治めて静観。
下野殿、笑い取りに来てます?」
そーゆーのは某足利芸人だけでお腹いっぱいなんですが。
「儂のせいではない。それが幕府と織田殿の意向よ。
もう近江は幕府の、織田殿の力で制圧済みという認識なのだろう。
・・・そんな簡単にいけば歴代公方様も細川管領殿も苦労しておらんだろうに。
織田殿も不幸よな、六角の討伐詐欺にまんまと騙されておる」
「あ〜確かに・・・観音寺城の陥落、何年ぶり何回目ですか?」
甲子園出場みたいな言い草になりましたけど、本当にその通りなんですよ。
「知らぬ。五回から先は数えておらん。
名門六角をその辺の大名と同一視しておれば、あの生命力は理解できまい」
ですよね~。何度本拠である観音寺城を落とされても、何なら自分たちで火を放って破壊しても、いつの間にか不死鳥のごとく蘇っている。
私の中では東の小田氏治と並んで戦国のフェニックスと呼んでいますし。
「と、いうわけで儂はもう馬鹿らしくなってな、もうどうにでもなれと低みの見物でもしておれば良いと考えておるのだが・・・倅が、な」
下野殿は溜息をつきながら備前殿へ話をふる。
「当然にござる!!我らの苦労を踏みにじるような無思慮な所業、義兄といえど認める事など出来ませぬ!」
「主犯は公方だぞ。おそらく」
憤慨する備前殿をからかう様な下野殿。
これ、備前殿はわかりやすく憤慨しているだけマシな状況ってやつですかね?
下野殿、憎悪とかそういうのを無理やり飲み込んでいる様に見受けられます。
「で、私に知恵を。という話ですか・・・」
「そうだ。儂らを大名扱いしているのはお主だけよ。故に儂らの隣人がお主ら朝倉と幕府というか織田だけになってしまった事実を深刻に受け止めるのもお主だけだ。
大名家として拡大を望む本能。これの行き先が無いことがどれほど危険な事か・・・」
戦国大名というのは拡大し続けないと死ぬんですよね~
つぎの占領地を担保に配下の忠誠を得る自転車操業。それは日本全土を統一しても止まることなく、明へ、朝鮮へと餓鬼のように押し寄せ・・・そして、バブルが弾けたかのごとく破綻を迎えた訳で。
まぁ、ちょっと単純化し過ぎた乱暴な見方ですけどね。
「というわけでござる。恥ずかしながら拙者では正直何が不味いのかすら正確には分かっておりませぬ。
敦賀、塩津浜の地をあれだけ発展させた中務殿であれば状況を打開する策がお有りかと考え、伺う為にお呼びした次第でござる」
「なるほど、状況は理解しました。だいたい事前に想定していた話題ですね。
ただ、ひとつ想定外の事態が」
いやいや、備前殿はともかく下野殿まで意外そうな顔しないで下さいよ。
「む?お主であれば予想できる話かと思うたが」
確かに話題は想定の範囲内なんですがね。
「ええ、話題はそうです。で、重要な話である以上、当主一家で対応する。わかります。
一家である以上、奥方も同席する・・・これが分からない」
そう、浅井備前殿の奥方、お市の方もこの場に同席してるんですよね~
いや、織田家のヒトでもあるでしょ貴女!?
「?何か問題が?」
「倅の嫁ながら軍略も嗜むものでな、視点は多いほうが良かろう?」
政略結婚した奥方ってのは実家の紐付きだってわかっているでしょうに。
六角と手切れの際は六角の養女、平井殿の娘を離縁して送り返しているのですから備前殿が分かってないという線も無し。
これは私達に一方的に有利な、浅井織田がババを引く案を出しても無駄だぞ、という下野殿のメッセージですねぇ・・・あー、やりづらい!!
多分、答24前でこんな感じの会話があったんじゃないかな。
長政「さすが義兄者!瞬く間に京まで制圧するとは」
久政「そうだな。で、当家は今後どうする?」
長政「え?」
久政「え?じゃないが。もう隣国は織田と朝倉しかないのだ。当家の伸びる先が、無いということだぞ」
長政「どういうことです?」
久政「はぁ、当家は京極に代わる戦国大名。規模こそ違えど朝倉織田と同格。そうだな?」
長政「はい」
久政「であれば、彼らと同格を維持する為に彼らの成長についていかなければならない」
長政「その成長先が・・・無い!?」
久政「そうじゃよ。で、どうする?当主殿」
長政「」
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・・・メンタル作者名どおりなんでお手柔らかだと嬉しいです。
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