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問:兄が自害したので家督を引き継いだ瞬間に歴オタだった前世の記憶がよみがえり、詰んでる事を理解してしまった私、朝倉景恒の心境を答えよ  作者: 麺樽豆腐
第一部 歴史改変への道

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答24:財布のひもを握っている人物が有能であることがどれだけ大事か。

永禄12(1569)年1月上旬、洛中 本圀寺


「うわ、ボロボロ・・・」


 そりゃつい先日まで三好三人衆が押し寄せてきてたんですから無理もありませんよ。


「ゆき、これが京の都です。全国から人と物が集まり・・・こうして破壊され消えていく、さながら底なし沼のごとくね」


 ゆきが整った顔の眉間に皺をよせて考え込む。


 もう数え十八ですか・・・大きくなったものです。背はあまり伸びていませんが。

 最近では子供っぽいところも抜けて、妙齢女性の所作が様になってきていますね。


 少し精神の成長が遅れているかもと危惧していたので、喜ばしいことです。


 もう私の小姓と言い張るのも無理が出てきていますが、水干姿で私の周りにいるのを誰も違和感を持たずにいるんですよね。

 いろいろと助かるのでそのままにしていますけど。


「ん、良かった」

「なにがです?」


 この惨状をみてよかったところを見つけるのは至難の業でしょうに。


「敦賀。詰まる心配してた」

「あぁ、需要と供給の話ですか」


 たしかに敦賀だけを見れば供給過剰もいいところですからね。

 特に製鉄関連など、生産が止められないなんていう代物も有ったりしますし。


「あっち、復旧普請の現場。道具が新しい、敦賀の鉄」


「螺子、釘、番線なんかの消耗品以外でも、結構使われてますね」


 実際に使われている様子を見ると、なぜか安心できます。


「でも内訳は螺子の引き合いが圧倒的。締め具と一緒に氣比神宮の専売にしたのはもったいなさすぎる」


「うちは製鉄そのものを抑えているんだからいいじゃありませんか」


 なぜかゆきが私をジト目で見つめてきます。


「ちょっと神宮に貢ぎすぎ。

 白拍子。『男をおだてる()()()()()』だっけ?

 教えたのはいいけど、それでうまく転がされてる」


「人聞きが悪いことを。どこで知ったんです?」


 ゆきが特大のため息を吐きました。


「あの娘たちとはよく話をする。愚痴を聞いたり、聞いてもらったり」


 なるほどねぇ・・・どんな話をしているのやら。


「さて、雑談はこれぐらいにしましょう。中に入りますよ。

 まず公方様に挨拶、その後は庫裏(くり)へお邪魔して勝手方の整理を手伝います」


「ん、幕府の書類、なるべく多く見る」


 頼みますよ。幕府の内情はなるべく多く把握しておきたいですからね。


―――

――


「公方様におかれましてはご機嫌麗しく」


「おう、景恒!就任時以来やから三月(みつき)ぶりか?

 三好のせいで肝冷やしたけどワイはこの通りピンピンしとるでぇ!

 それもお前の置いてった赤座のおかげやで!」


 本当に機嫌良さそうに公方様が語っています。


「赤座が?失礼を働いたのではなく?」


「失礼なのはワイももうあきらめた。っちゅうか藤長が匙投げるん初めて見たわ。

 ある意味凄いなアイツ。それでいてちゃんとコッチを馬鹿にしとるわけやないってのが伝わっとるし」


 あぁ、不思議ちゃん特有の雰囲気がありますからねぇ。


「それは雇い主として申し訳ないことをしました。して、いま奴は何処に?」


「おう、浅井んとこの山崎新平とかいう奴と意気投合してな、逃げてる三好を騎兵だけでおちょくりに行っとる。

 徒士なしとか何考えてんねん!て思うとったけどな、あれだけ動けると違うわ~

 この寺囲まれてる時に強引に抜け出して、三好の兵糧燃やして戻ってきよったさかい、驚きで目が飛び出そうになったわ」


 何やらかしてんでしょうねアイツ。あとで損害確認しないと・・・


「・・・馬、安くないんだけど」


 ほら、おゆき様の機嫌が・・・


「ん?そっちの子は?女性(にょしょう)、やんな?」


 おっと、ゆきの紹介を済ませないと。


「あぁ、当家の番頭です。此度の騒ぎでどれほどの被害が出たのか測りかねたので連れてきました」


道川(どのかわ)ゆき、と申します。以後よろしゅう」


 公方様が面白そうな目で私を見てきます。

 が、考えてるような妙な意図はありませんからね。


「透破の藤とかもそやけど、いろんな奴がおるんやなお前んとこ」


「一応言っておきますが、藤もゆきも只、才のみでこの場にいるのです。

 ゆきは当家の発展の要にございますれば、彼女がおらねば公方様も越前での暮らしはもっと慎ましくなっていたでしょうな」


 財布のひもを握っている人物が有能であることがどれだけ大事か。


「さ、さよか・・・怖、おちょくらんとこ・・・

 せや、もうだいぶ時間たったとおもうけど、義景、大丈夫なんか?」


「ええ、相変わらず生ける屍ですが何か?」


 あれは次男が生まれるまではあのままでしょうね。


「それでよぉ越前は回るなぁ・・・つまりは当主不予(ふよ)で跡継ぎもおらんのやろ?

 普通もめまくるんとちゃう?」


「一乗谷の治世そのものは安定していますからね。

 おまけに家臣のうち、やらかしそうな有力者である私、大野、安居なんかはそれぞれ越前の外で忙しくしていますから。

 余計なことを企んでいる暇はありませんし、世継ぎが生まれれば復活するとわかっていますしね」


 斎藤治部大輔(竜興)殿の縁者で小少将という女性が義景の世話をしていますから、あの二人の間に子が出来るまでの辛抱です。

 金ヶ崎の戦いが終わった後になりますけど。


「やらかす面子に自分いれとるのがオマエらしいなぁ。

 ま、越前は義景の復活を待つしかないっちゅうこっちゃな!

 それでも、勝手方の支援とかはオマエだけでやれるんやろ?

 銭金の仕事やりたがる奴おらんねん、信長んとこの奴らに頼りっきりや。

 オマエもちょっとだけでも見てくれんか?」


「そのためにゆきを連れてきましたからね。まぁ帳面など見せていただいてから何が助けとなるか考えましょう」


 そう答えて、公方様の前を辞しました。


 ――そして、幕府の書庫として利用している庫裏にて――


「これはひどい」


 ゆきは庫裏に放り込まれた証文・書付・帳面その他諸々に目を通しつつ、それらを片付けながらぼやく。


「ここにあるのは庶事の上澄み、何なら公方様が目を通すこともあるもののはず。

 だのにこの散乱具合。何が問題かとか調べる以前の問題」


 ゆきの憤慨を聞いて、書類整理に走っている男が苦笑を漏らす。


「ですよねぇ~お嬢さん。まず必要なのは人手!!わかってはいるのでござるがな~」


 不思議と警戒させないような人好きのする笑顔を浮かべたまま、素早く()()()の手を動かして書類を棚に片付けていく。

 ――ん?


「お猿さんは分かってる。書類見る限り庶事頭の村井って人もすごい有能。でも人手増強の嘆願書はここで寝てる。

 公方様か人事権ある人に渡さないと駄目」


「それ、幕府の一色様と上野様に一度持ってったんでござる。しかし『いずれ手当する』の一言で、ここに戻ってきたんでござるよ」


 苦笑いしながら力なくうなだれる小男。動きがいちいちコミカルですね。


「ゆき、ゆき。彼、たぶん織田家の偉い人」


「いやいや、拙者はただの使いっ走りでござるよ。あ、自己紹介しておりませんでした。これは失礼!」


 ぺしぺしと自分の額を叩く小男。いや、紹介無くても誰かわかりますよ。


「拙者、木下藤吉郎と申すケチな小物でござる。今は村井様の与力として使い走りの日々でござるよ」


「ん。道川ゆき。お財布係。で、あいつが朝倉彦四郎」


 ――危険。秀吉から変な報告が魔王へ行かないように振る舞わないと。

 この猿、たしか大垣城の会談時の織田諸将の中にいたはずだから・・・


「おぉ、大垣では遠目であったので気が付きませなんだ!これは失礼!朝倉様、以後お見知りおきを!」


 ――やはり、あの時のことを覚えているか・・・

 上司の顔色を窺うザコムーブ継続しないと。


「こ、こちらこそ失礼を!あの織田殿のもとで活躍されている方に対して!

 朝倉彦四郎にござる。主・左衛門督ともどもよろしく願います」


 ゆきが『いきなり何?』って顔をしましたが、あとで説明しますと一瞥したらもとのすまし顔に。

 アイコンタクトだけで理解してもらえて大変助かります。


「織田殿の元には優秀な方々が集って、うらやましい限りでござる・・・越前は、こう(しがらみ)とか多くて・・・」


「おぉ、それは苦労なさっておいでですな、しかし越前の商人どもは優秀と聞きますが、家中は大変なのですなぁ」


 探りか?京に敦賀の産品が入っている以上そこに目はつけられているだろうが・・・


「えぇ、我ら侍は振り回されておるのですよ。左衛門督様などは商人とのやり取りを我らに丸投げする始末でして、いいようにやられております」


「左様でござったか!・・・あ、ところで・・・」


 猿がさらに踏み込んでこようとしたその時、庫裏に現れた新たな人物。


「おぉ木下殿、ここにおったか。村井殿がさがしておったぞ」


「これは浅井様!なぜこのようなむさくるしい所へ?」


 入ってきたのは浅井備前守長政殿。たしかにここに来るのは不自然だが・・・


「なに、村井殿と山崎新平の暴走の後始末をしていたのだ。で、多忙な村井殿に代わり報告書を持ってきた。

 ここに木下殿がおれば所司代まで来るように、との伝言をついでにな」


「なんと!これはお手数をお掛けいたした。しからば拙者は仕事に戻らねば。

 浅井様、朝倉様。これにて失礼仕ります!」


 あ~、ここで仕事さぼってたんですかこの猿。

 しかしまぁ助かった。この程度では魔王の目を引く報告などできまいて。


「ここにいると思っておりましたよ・・・朝倉殿・・・」


 お猿さんがいなくなったのを確認してから、浅井殿が声をかけてきました。


「ん?どうしたのです浅井殿」


 思いつめたような真剣な顔ですけど。


「・・・相談が・・・ござる・・・父も(まじ)えて。

 我らは義兄者と入れ替わりで小谷に帰還する。

 そこで・・・今後の話を・・・」


 声を潜めての相談。これは真剣にならないといけないやつですね。


「承知しました。浅井殿が帰還し次第、小谷に向かいます」


「・・・助かります・・・詳細は・・・そこにて・・・」


 さぁ、どう転ぶか。以前吹き込んだ南近江を掻っ攫われた件に絡んでの身の振り方の相談と見ましたが、はたして。


ザコムーブ、行動イメージモデルは楠木正成(逃げ上手の若君)なんだけど、描写が超難しい・・・


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読んでいただきありがとうございます。


よろしければブックマーク・★評価・感想等お願いいたします。


・・・メンタル作者名どおりなんでお手柔らかだと嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
観音寺城の陥落……。ねぇ。 言霊って怖いね。 こうですか? わかりかねます。 南近江も浅井が取ればええやん。もちろん、久政の口八丁手八丁で謀略仕掛けて。
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