答23:魔王をいざなう大役、しっかりと果たして下さい。
永禄11(1568)年9月中旬、若狭国大飯郡 高浜城
只今、工事の喧噪が響き渡る高浜城の一室にて新たな城主と会談中です。私が上座で。
前城主、逸見駿河守昌経と旗下の荒くれ船乗りたちは、仲良く小浜の町で並んでいます。首だけで。
そして今私が十兵衛と共に面談している新城主の方ですが、強烈に印象に残ります。
齢五十を過ぎたとのことですが、完全に剃りあがった禿頭と顔に刻まれた皺および眉に混じる白いものを除けば、全く年齢を感じさせません。
身の丈はやや高めとはいえ普通の範疇なんですけど・・・分厚さは私の倍くらいありますよね?
マッチョ・・・とは少し違うんですよ。筋肉と脂肪が理想的に絡み合い、どのような打撃でも揺らぐことはない大木のような肉体。
鎧を着こめばどのような武器でも効くことはない闘士。
武藤上野介殿。若狭における朝倉派の重鎮。
本拠の石山・佐分利川流域をご子息に任せてこちらに来ていただきました。
「ちょろちょろとうっとおしい逸見一味を叩き潰したのは爽快でしたぞ彦四郎殿!
儂が出張るとすぐ海に逃げおってからに・・・」
すぐに通称で呼び合うようにして距離を詰めてくるのも、敦賀にはいない個性ですねぇ。
「その海も、これからは朝倉とあなたのものなのです。敬次郎殿」
武藤敬次郎友益。かぶき者だったり悪の化身だったりを内に秘めてたりしませんよね?
「そうでしたな!それにしても剛毅なものじゃ!若狭全域の海賊共を一網打尽ですからな!
敦賀・三国の水軍衆は恐ろしいほどの強さじゃった。あれに比べれば逸見の船など玩具のようなものよ。
十兵衛殿、あの精強なる船を儂のもとにいただけるので?」
海賊狩りの総指揮を執っていた十兵衛がにこやかに応じる。
「もちろんです。高浜に残った善き民を敦賀流の調練にて海の男に育て上げましょう。
そのために敦賀の船乗りが永くこの城に出入りするわけですが・・・」
実質的にこの城を敦賀の監視下に置くという話ですが、武藤殿の反応はあっさりとしたものだ。
「構わんよ。何かを奪う訳でもなし、自分たちの食い扶持は商いで稼ぐといわれればな。
しかも冥加金までしっかり納めるとなれば、それは既に高浜の民と同義よ。
ただ民衆や商人から奪うだけの逸見どもとはえらい違いじゃ。
しかも丹波はともかく丹後一色の賊共に対しては共に若狭を守ってくださるという」
まぁ丹波は内陸ですから水軍ではどうしようもないですけど。丹波の対三好・内藤は武藤親子が頼りです。
「加えてこの高浜城と倅の石山城を朝倉の築城術をもって強化して頂いておる!
錬石、でしたかな?石垣も土塁も広場も埠頭すら思いのままに広げられるとは!!
儂は狐に化かされとるのかと思いましたわい!
おまけに海を一時的に干上がらせてそこに巨大な堀切を作る!
これで島となったこの城は、わずかな手勢だけで陸から何万押し寄せようとも防ぎきるでしょうな」
石山城のほうは控えめですが、この高浜城は私にとっても重要拠点です。自重なしで魔改造しましたよ。
「舞鶴を根城にする一色という海賊共。
かつての四職が落ちぶれたものですが、彼らの侵入を阻む防壁としてこの地は重要ですので。
若狭の西の護りは貴方にかかっています。孫犬丸殿もここ高浜には期待を寄せています」
孫犬丸殿のことに触れると、嫌そうな顔を隠しませんね。
まぁ正直なのはいいことです。悪だくみする手合いには見えませんし。
「御年五歳と言い張るのはどうかと思うが、そうでもせねば佞臣渦巻く後瀬山からお助けできなかったのも事実。
先代様のような苛烈な方ではない故に悩まれることも多かった方だ。
今は心安らかにしておられるのだな?」
そう、意外だったんですけどある意味戦バカだった先代義統殿と違い、争いを好まない穏やかな方だったんですよね、孫犬丸殿。
だから薬物やら暗示やらなんぞという物騒な手管は一切使わず、今は敦賀の政治経済を学んでいただいています。
治三郎が筋がいいと太鼓判を押していますので、文官衆の仕事を経ていずれは小浜に帰還していただく流れになるでしょうね。
「えぇ、金ヶ崎で我らの仕事を楽しそうに学んでおられますよ。若狭に安寧がもたらされた暁には、小浜にご帰還いただきたいと考えております」
そのころの若狭は塩津浜のように完全に敦賀経済圏に組み込まれているでしょうけど。
「そうか・・・良かった、と考えるとしよう。
儂にできるのは若狭を護ることだけじゃ」
武藤殿がため息とともに言葉をこぼした。
「そうですね、敬次郎殿が西の護りに立つ。それが最も孫犬丸殿を安心させることでしょう。
敦賀の船衆も協力したいと申し出ていますよ」
ん?武藤殿が苦い顔をしましたね。
「船乗り商人達には感謝しておる・・・あれだけの鉄砲、玉薬があれば精強な兵が減った儂等でも丹波三好の精兵にあらがえるじゃろう。
・・・しかしなぁ、儂らに代金払えるもんじゃろか?南蛮商人はがめついと聞く・・・」
十兵衛、苦笑いはやめなさい。
実際は敦賀の製鉄所から生成した鉄砲と硝石ですから、そこまで高くないですけど。
いい機会です。南蛮商人には濡れ衣を着ていただきましょう。
「おや?こちらに卸す武器弾薬は、すべて前金で頂いていると伺っていますが・・・」
あっけにとられた武藤殿の顔は、愛嬌がありますね。
「なんと!?、いや・・・儂らはそんな金持っとらんし、払った覚えはないぞ!?」
そりゃ現金取引ではありませんから。
「南蛮商人への支払い?あれは必ずしも銭である必要性はありません。彼らが欲している商品を渡せばよいのです」
「いやいや、南蛮人が求める商品。それこそ心当たりがないわい」
いえいえ、彼ら南蛮人の欲する商品、それはこういった紛争地にこそあるんですよね。
「とはいえ既に頂いているのですよ。何って?奴隷ですよ。さっきも逸見の残党からいっぱい調達したでしょう?」
南蛮人のガレオン船は日本人奴隷を満載して東南アジアやらインドやらで捌いていますよ。
「・・・なんと、賊が鉄砲玉薬に化けておるのか・・・」
実際は南蛮船にすべて卸すのではなく、一部は大月備中の研究所逝きですけど、些細な違いでしかありませんよね。
「そういうことです。今後も敬次郎殿が丹波や丹後の賊を討伐するたびに、武装が充実していくという寸法ですね」
一色海賊をやっつけた→武藤殿はレベルが上がった!
三好山賊をやっつけた→武藤殿はレベルが上がった!
RPGかな?
「ふぁっふぁっふぁっ!!それは愉快じゃ!!では儂は賊狩りに勤しむとしよう!
儂の性に合っておるし、それが若狭の安寧につながるならなおのことじゃ!
感謝するぞ彦四郎殿!暗かった若狭に明るい希望が見えてきた!!」
「お役に立てたなら何よりですよ敬次郎殿。あなたの働きが若狭の繁栄をもたらすのです」
――そして、腐っても四職である丹後一色が幕府に武藤殿の行状を訴える事により魔王率いる勇者討伐軍が結成されるのです。
後ろ盾たる朝倉家をも目標にした、ね。魔王殿を敦賀の鍋に誘う大役、しっかりと果たして下さい。
史実金ヶ崎の戦い、まずノブがなんで朝倉討伐に行ったか謎。
ノブ「将軍就任後に上洛要請したのに来なかった!」
義景「いや、呼ばれてねぇし」(二条宴乗記より)
孫犬丸「俺は呼ばれてはいるんだが、なんで幼名?当時既に若狭武田家当主ぞ?」
この時既に織田朝倉の関係は破綻済み故に呼ばれてすらいないと見るべきか?
んで、
幕府&朝廷「若狭の武藤討伐するやで」
ノッブ「おかのした」
公家&幕臣「一緒に戦うやで」
ノッブ「若狭入りしたで」
武藤「許してクレメンス」
ノッブ「人質出すならエエで」
武藤「母ちゃんゴメンやで」
ノッブ「ほな・・・このまま義景シバくでぇ!!」
朝廷&幕府「?????」
公家(幕臣)「勅命(上意)とは一体・・・ウゴゴゴゴ」
勅命やら上意やらは越前なんてひと言も言ってないよね?幕臣だけならまだしも飛鳥井とかの朝廷羽林軍連れ出しといてコレはかなりマズいんじゃ・・・
若狭着いてからその場のノリで越前攻撃決めたようにしか見えないんだけど大丈夫なんかコレ?
当作の真面目な信長だと武藤討伐だけして帰っちゃうぞ。
つーわけで、当作ではこんな流れになる予定。
武藤「高浜城でガチ籠城やで。弾撃ちまくりやで」
敦賀水軍「飯と弾、ついでに兵士を高浜城にお届けやで。怪我人は引き取るやで」
ノッブ「あの船どこのモンや?ワイらに喧嘩売っとるやろ」
敦賀水軍「モンクあるなら朝倉に言うやで」
ノッブ「勅命&上意を果たすには朝倉シバかなあかんやろ」
公家&幕臣「しゃーなしやで」
ノッブ「んじゃ、越前に突撃やで」
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読んでいただきありがとうございます。
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・・・メンタル作者名どおりなんでお手柔らかだと嬉しいです。
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