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問:兄が自害したので家督を引き継いだ瞬間に歴オタだった前世の記憶がよみがえり、詰んでる事を理解してしまった私、朝倉景恒の心境を答えよ  作者: 麺樽豆腐
第一部 歴史改変への道

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12/20

答12:侍だけが戦力の時代はとっくに終わっているというのに

永禄8(1565)年5月下旬、越前国今立郡川島村 伊冊隠居屋敷


「はっはっは!其方(そなた)の申したとおり畿内は荒れたな!大荒れだ!まさか大樹様が(しい)されようとは予想もしておらなんだわ!!

 で、彦四郎よ。()()()()()()()を予見しておったのか?」


 京の都に忍ばせていた密偵より、三好三人衆が御所巻きの果てに将軍、足利義輝を殺害したと知らせが来てから、父上が妙に機嫌がよいですね。血が騒ぐのでしょうか。


「いやまさか!・・・と言いたいところですが、えぇ予想の範疇内(はんちゅうない)です」


 つまり私は武家の棟梁たる征夷大将軍の命が危ないのをわかっていて見殺しにしたわけですね。

 その上で迅速に情報を越前に持ち帰る手配だけは済ませていた、と。


 本来であればお助けできたのでは?という疑問は(もっと)もです、ですがねぇ・・・()()()()()()()()()

 応仁の乱から畿内に混乱をもたらし続け、挙句近江に逃げたり戻ったりしている将軍家に、うまく利用する算段でもなければ近づきになりたいとは思いませんね。


「つまりは彦四郎、其方の言っていた利用する畿内の権威とは大樹様ではなかった、ということだな。我らに何の益もないお方をお助けする義理もないか」


「大樹様、いやもう亡くなったので義輝公とお呼びしてしまいますが、かの方にこちらが売れる()がありませんでしたからね」


 こちらの手札に魅力を感じていただかないと、取引は成立しないですからね。我々では三好は討てませんし、後ろ盾としても期待されないでしょう。

 義輝公の立場からすればどんなに協力しても恩に感じることなく三好を討つために使いつぶされる未来しか見えませんでしたし。


「では、三好と組むのか?かれらは堺公方なるものを立てようとしているそうな」


「いやぁ、さすがに将軍弑逆を犯した彼らと組むのは悪手でしょう。なにより三人衆と松永弾正の間で絶賛内訌中ですから、暫くは畿内のゴタゴタを収拾できないでしょうね。

 それよりもいい人材がおりますよ。現在その者の運命は風前の灯ですが、それだけに我らの助力でも恩に感じるでしょう」


 まあしばらくすれば何事もなかったかのように恩を忘れるんでしょうけど、それは彼らが足利である以上しょうがないですし。


「ほう、そんな都合の良い人物がいるのか。誰だ?」


「興福寺一条院門跡・覚慶様、義輝公の弟君です。同じ兄弟である周暠様も弑された以上、将軍家最後の生き残りとなる方です」


 のちの15代将軍、足利義昭その人です。

 この方も信長の力で将軍になっておきながら信長包囲網に参加したりと問題のある人物ですが、足利である以上しょうがないんですよ。

 なにせ初代将軍の足利尊氏からしてまともな人物じゃないですから。いやな伝統もあったものです。


「我らの力で将軍に立てようというのか?それでは結局三好と事を構えることになるではないか」


「それ以前に命が危ない状況ですよ、興福寺のある大和国は松永弾正の拠点ですから。

 ということで、子飼いの志能便衆並びに明智党と共に私が大和入りして覚慶様を救い出しに動きます。

 無事お救いした後は、六角殿に押し付け・・・いえ、託すことに致しましょう。定頼公以来、将軍家と共に三好と争ってきた家ですからね、嫌とは言いますまい」


 実際のところは情勢次第で六角と三好が手を組むこともあり得るんですがね。史実ではそうなりましたし。

 それでも畿内のゴタゴタに首をつっこんで、我らや一乗谷が疲弊するほうがよっぽど問題ですし、何より魔王(信長)に目をつけられる危険を冒したくないですからね。

 実際のところ、史実でも覚慶救出には朝倉家も絡んでいたそうですし、このくらいであれば危険も少ないでしょう。


「で、其方が敦賀を離れてまで行わなければならないことであるか?新たに召し抱えた明智なるものは優秀と言っておったではないか、そやつに任せられんのか?

 其方が不在の間、敦賀は誰が預かるのじゃ?」


「覚慶様との顔つなぎの意味合いもありますし、なにより最悪越前までお連れすることもある案件です。私でないと決断はできませんよ。

 敦賀についてはしばらくは大丈夫です。必要な指示は既に出していますし、結果も1月2月で出るものではありませんから。不測の事態に備えて父上に戻っていただく事も合わせれば、大和への往復程度の時間は捻出できますよ」


 父上が大きくため息をつきました。


「しれっと儂をこき使う予定を立てよってからに・・・まぁよいわ、内政周りの話はわからんぞ。守護様への報告と戦関連のすり合わせは行ってもらうからな」


「承知しました。ちなみにここ川島での修練の成果は?」


「整列・前埋め・行進・止まれ・槍上げ・槍下ろせ。ここまで叩き込んだ所で人員の入れ替えじゃ。融通は()かんがまぁ使い物にはなるじゃろう。と言いたいが・・・あれらは()()()にしか使えんぞ?」


()()()()()()使()()()()から大丈夫です。もしくは薬漬けにした上で捨て石として使いますね。

 まぁもっとも、粘り強さが必要な戦には今敦賀の普請を行っている軍役衆が担いますよ」


 基本的にはまともな会戦を行う予定がありませんから。野戦築城と射撃戦でけりをつけます。


「侍の頭数(あたまかず)が減っていることは問題にはならんのじゃな?」


「無論です。もっとも一乗谷には侍の数が減って戦力が低下していると報告していますがね。私の見たところ疑いの目で見てくる人物はいません。大野の景鏡を含めて。

 ・・・まったく、鎌倉の世でもあるまいし、侍だけが戦力の時代はとっくに終わっているというのに。武芸と指揮では必要な才能が全く異なるのになぜ部隊指揮は武士でないと駄目だと考えるのでしょうかねぇ」


 今、普請を生業(なりわい)にしている軍役衆の中でも、武芸ができなかろうがリーダーシップを発揮している者が出ています。彼らを物頭(部隊長)とすることで武士階級無しの部隊が編制できますから。


「まぁそう言うでない。儂にしても武芸の心得が(つたな)い者が上に立つ事には違和感を覚えるのじゃ。其方の武芸が()()()()()なのを諦めている儂でもじゃぞ」


「元坊主に何を期待しているんですか全く。付け加えると戦術眼もダメダメですから、私は戦場に立たないほうがいいんですよ。仮に戦に出てもそこに居るだけです。指揮は優秀な軍師に丸投げですね」


 私は本来、家を継ぐ身ではなかったんですよ。武家としての教育を受けたとは言い切れないところがありますから、常識も彼らとは若干違っているのでしょう。

 前世の記憶?あぁ、それも影響はあるでしょうね。


「わかったわかった。して収穫直後に若狭国吉へ出兵する以外はとくに動く予定はないということでよいのじゃな?」


「はい、若狭武田に反抗的な国吉の粟屋氏を成敗するのは守護様からのご下知ですからね、それは仕方がないとして、それ以外は力をためる段階です。無駄な戦はできません」


 国吉城を攻略することは対信長戦略に必須ですけれど、今年どうしても落城させる必要はないですからね。南条郡の武士達のガス抜きを考え、与力に呼んで略奪でもさせれば十分でしょう。

 その前に商人を通じて粟屋領の米を買いあさっておけばさらに効果的です。米より銭の方が軽いですからね。略奪しやすそうです。


「では儂の役目は其方が不在の間、妙な動きがないか目を光らせることだけでよいのか?」


「いえ、覚慶様救出後に落ち着く先を確保することも考えて、私は6月頭から8月半ば頃まで敦賀を留守にします。戻ったらすぐに国吉城攻めを行うことになります。

 そこで敦賀勢の動員は問題ないですが、略奪品切り取り次第を報酬として南条郡から与力を募りたいと考えています。父上にはこの呼びかけをお願いしたく」


 国人領主勢の与力など野盗の集まりと大して変わりありませんが、今年の戦略目標である粟屋氏の消耗を強いる事にとっては最適な配置となるでしょうし、快く外道仕事に邁進するでしょうね。

 南条郡からは商業やら博打やら風俗やらでちと搾り取りすぎていますから、ここらで少々懐を潤していただいて、再び搾り取れるようになっていただきましょう。


「略奪品を餌に釣るのか。なんか儂等が面倒を見ていた時より待遇悪くなっておらんか?こちらとしては軍勢を動員できれば何でも構わんといえばそうじゃが」


「不満に思うものもいるかと思いますが、文句は大野にお願いします。わたしは慣れない統治の助けになるよう手を差し伸べているだけですよ」


 敦賀からの口出しを厭うていたら、敦賀から金も出なくなっただけです。自業自得ですが、彼らが恨みに思うのもわかります。しかし、領地替えを強行したのは景鏡ですから。

 自らが搾り取られているという自覚のない新参領主は、ゴミ領地押しつけやがって、と大野を恨むのが精一杯でしょうね。


「物は言いようじゃのう・・・まぁ武芸はともかく、軍政とかそちらの才能については疑っておらん。一乗谷や大野は其方の恐ろしさには気が付いていないようだしのう」


「恐縮ですが、微力を尽くして敦賀をよりよく発展させていきますよ。大野を下すその日までね」


 正直金ヶ崎の戦いという危機を乗り越えるのが先ではありますが、その後の戦略も構築しないといけませんから。

読んでいただきありがとうございます。


よろしければブックマーク・★評価・感想等お願いいたします。


・・・メンタル作者名どおりなんでお手柔らかだと嬉しいです。

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