答10:ヒトであれば殺せる。これ以上理由が必要ですか?
永禄8(1565)年3月中旬、越前国敦賀郡 金ヶ崎城 月見御殿下埠頭
「敦賀様ぁ!そっち入らねぇで下せぇ!!そこはまだ錬石が固まって無ぇんでさぁ!!」
「おっと、失礼しました。その調子で必要なことは遠慮せずに言って下さい!」
「気ぃ付けて下せぇよ!!あっ!!そっちの小僧!!起重機の下に入るな!死にてぇのか!!」
鎚・鑿・鉋の音や、土工達のかけ声で賑わう建設現場の喧騒に負けないように声を張り上げます。
工事中だというのに無理を言って入らせて貰っているのですからね、それも仮桟橋を突貫工事ででっち上げる無茶振り付きで。これ以上迷惑を掛けないようにしなければ。
木製の筏を並べた仮桟橋に向かいしばらく待っていると、そこまで無理押しした原因が近づいてきます。ぱっと見はボロい漁船が三艘並んでいるように見える、一隻の船。
川舟屋に建造をお願いしている三胴縦帆船の技術実証船です。まだ波の荒い冬が終わっていないというのに、無事に三国湊まで往復してのけたようです。
仮桟橋に待機している人員が船から投げられた舫綱をくくり付け固定させている作業を横目に、この船の舵をとっていた人物に話しかけます。
「敦賀へようこそ、堀江石州殿。未知の冒険に挑む勇気、我等は歓迎いたします」
「はっ!恐縮に存じまする!敦賀様には拙者の我が儘に答えて頂き、感謝の極みにて・・・」
「あぁ、ここは一乗谷ではありませんよ。無理に堅苦しい言葉遣いをしないで下さい。正直、違和感キツくて気持ち悪いです。あなたの本質は船乗り、私が迎えているのも船乗り、それで良いでしょう?」
一瞬、こちらを値踏みするような目を向けた後、 不敵な笑みを浮かべて態度を一変させました。
「ならば、そうさせて貰おう。親父殿の言ったとおり、陸の武家の中では毛色が違うようだな!」
「えぇ、私は文弱の変わり者だそうですから」
「はっはぁ!見る目のない者もいたものだな!貴様は己の目的のためなら手段を選ばん手合いだろう。ただ無駄と断じたモノには一切手間も情けも掛けないだけだ。そういう目をしている!違うか!?」
えぇ、実利重視の海賊さんは話が速くて助かりますよ。私は微笑みながら肯きを返した後、さっさと本題に入ります。
「それで、どうです?乗り心地は」
「正直なところ良くは無いな。所詮は小さな漁船よ。だが、そんなちゃちな船でこの時期の海を渡れるのは驚異的だ」
漁のために海に出ることと、交易等のため海を渡ることは難易度が全く違うと聞いています。それが漁船三艘を改造した雑な急造船が可能としたことに新鮮な驚きを感じているようです。
「なにより操作性が群を抜いている!前帆無しで航行したときは我ひとりで操船していたほどだ!もう少し大型化したとしても船員は3名もいれば足りるだろう!貴様、我等を失業させるつもりか?」
「いえいえ、人員に見あった規模の船数を用意しますから、あなた達は失業などしませんよ。するのは若狭の海賊共です」
「我等が貴様の下につけばという前提でな!違うか!?」
少しだけ、周囲に冷たい緊張が走りましたね。
実際に傘下に入れと言うわけでは無いにせよ、堀江殿は越前北部・三国の国人であり、越前南端の敦賀へ全賭けするのは難しいかもしれません。
「ええ・・・何かご不満が?」
私の内心を気取られぬように微笑みを浮かべながら、探りを入れましょう。
「はっはぁ!我には無い!親父殿も文句なしだそうだ!安居の脳筋や加賀の坊主共なんぞより余程話が出来るしな!」
快活に笑うことで周囲の緊張もだいぶ緩くなりましたか。どうやら条件等で不満があるわけでは無いようです。
「が・・・少々気に入らん。我の配下共も似たようなものだろう。理屈の話ではない、感情というヤツだ」
口調も声色も真剣そのものでの言いようです。これは軽く受け止めてはいけませんね。
「気に、障りましたか」
「そうだ、貴様の話に不備は無い、我の見たところ裏も無さそうだ。他のどの勢力からの話と比較して最も好条件であることも間違いない。
しかしな、そこまでの手間をかけておきながら、貴様の利点が薄い」
薄い・・・ですか、敦賀としては海の交易路の安定は物凄く大きい利点なのですが。
「フン、わからんという顔をしているな、貴様の手元にいる水軍衆と我らに不満の無い数の船を用意する。容易なことではあるまい!
その上で敵対する若狭水軍を下したいと言うのでな、貴様らだけでこなせそうな目的を語られたところで困惑するのも無理はなかろう!」
「つまりは・・・力の入れすぎが気になる、と?」
確かに若狭水軍を殲滅するだけならば、三国衆に声をかける必要は無さそうですし、その後の展望は語っていませんでしたからね。先の展開が見えず私の腹の底が読めないのが不気味に映る、と。
とはいえ、その先を語ったとて理解を得られるかどうか。
「石州殿。私はあくまでも陸の人間です。海の事情を理解しているとは言い難いです。故に少々念を入れすぎている事はあるでしょう」
「フン、陸の事情を考えても不気味だと言っているのだ。
あれだけえげつない策謀で力を集めながら何処にも向かおうという素振りを見せん。
貴様、我が従う侍の数が減っているからといって無力な文弱と騙されるだけの阿呆に見えるのか?」
「見えませんが、失礼ながら陸にそれほど興味が無いと思っておりましたよ」
「その通りだ。だがな、海に出るにあたって悪影響があるなら話は別だ。
先程も言ったが我の目が節穴で無ければ貴様は文弱とは程遠い、目的の為なら手段を選ばぬ手合いであろう。
そんな貴様が何を怖れる?居竦む?大野とは言わせんぞ、正直な所歯牙にもかけておるまい!違うか!?」
いや、歯牙にかけないのは誤解です。ちゃんと動向は注視していますよ。確かに優先順位は低くなっていますが、油断できる程の人物ではありませんよ景鏡は。
しかしまぁ、納得していただくためにも、私が怖れている人物について語る必要があるようです。いい機会です、第六天魔王の脅威について整理がてら聞かせてあげましょう。
「わかりました。お話ししましょう。
ただし、貴方がた三国の海衆にやっていただきたいことは以前お話したとおり、若狭水軍の撃破殲滅です。それ以降は特に指示することはありませんよ。別途お願いは発生するでしょうが、それはその時に改めて条件を詰めましょう。
なに、私からどうこう言わなくとも貴方がたなら自主的に商業圏を広げるでしょう?結果、大消費地である京の都へ通ずる敦賀の湊に富が集中する。海衆に対して考えていることはこの程度ですよ、ご指摘のとおり私は陸の事情で忙しく、迫りくる脅威に備えることで手一杯ですから」
「ああ、了解した。ある意味我らも眼中にないということをな。それで?そんな貴様が備える脅威とやらは何だ?災害か?神仏か?はたまた妖怪の類か?」
「いえいえ、ただの人間ですよ。私は個人的に敬意と畏れを込めて勝手に第六天魔王呼ばわりしていますがね」
史実ではもっと後年に武田信玄の煽りに乗る形で名乗った、諧謔でしか無い自称だったのでしょうが、後世に文書が残った上、彼の業績が凄まじいものだったことと合わせて膾炙してしまったのですよねぇ。
まぁ今現在の行状から見ても彼を魔王呼ばわりすることに抵抗はありませんが。
「はっはぁ!それだけの評価をする男か!誰だ!?越後の龍か甲斐の虎か相模の獅子か、はたまた安芸の日輪か肥後の熊か!?」
彼等は既に有名なふたつ名があるでしょう、そんな方々を魔王呼びはしませんって。
「彼の者の名は、織田上総介三郎信長といいます。ご存じですか?」
「・・・確か尾張の国人であったか?あそこは織田氏だらけで鎬を削っていたが、近年ようやく国を牛耳る者が出たという。確か其奴、海道一の弓取りの首をあげる番狂わせを演じたとか」
一応有象無象の国人ではなく、尾張下四郡守護代の三奉行クラスの家格なのですが・・・まぁ幕府から見て守護の下の守護代(半分のみ)の、そのまた下である家老(3分の1)など、他国の者から見ればその辺の国人と大差ないのでしょう。
「そうですね、国人に毛が生えたような家格でありながら、領地も尾張一国にも満たないながら、家督を継ぐ際のゴタゴタを乗り越えた上で、駿河・遠江・三河を支配する今川家と長く渡り合った挙げ句、1会戦で十倍近くの兵数差を覆し総大将の首を獲る事で逆転劇を演じた御仁です」
実際には織田弾正忠家と今川家の力量差は、尾張三河で争う場合においてはそこまで大きくなかったと私は認識していますが、端的な言葉にすると凄味が出ますねぇ。
「なるほど、戦上手の手合か。それとも偶然を味方につけただけやもしれん」
「あぁ、補足しますと彼は家督を継いで以降何回か似たような戦をこなしています。どれも相手方の兵数が強大な所、決断の速さと機動力、卓越した戦術眼と大胆な用兵、自身の部隊の精強さを最大限活用して戦略目標を達成し続けています」
勝ち続けているわけではない点が、また恐ろしいのですよ。この頃から見切りというか損切りが巧みなのです。
「そうか、貴様の爺様と同類というわけか」
「ええ、因みに祖父が今際の際に気にかけていた人物でもあります。彼の行く末を見届ける為にもあと5年は生きたい、とね」
当時の私は、織田?誰?としか感じませんでしたが、英雄は英雄を知るとでも言いましょうか、老いてなお祖父の慧眼は磨きがかかっていました。
しかし、魔王の恐ろしさは祖父が喝破した才能ではないのです。
「しかしな、その類であればそれこそ貴様の祖父やら越後の龍やらが居るだろう?先達の事績を知っておれば対処できん事はあるまい?」
「そのとおりです。彼の戦場での才覚は私の見立てでは越後の龍と同等かやや劣る程でしょう。甲斐の虎や相模の獅子のように対抗することは不可能ではないでしょう」
「ならばなぜその男をそこまで恐れる!?貴様が小物故などという寝言は聞かんぞ」
「ええ、そんな理由ではありませんよ。私がかの御仁を勝手に第六天魔王呼びする所以は、彼の合理性に全振りしたような思考・行動にあります。
私の見立てでしかありませんが、彼は戦術の才覚を遺憾無く発揮した村木砦や桶狭間のような戦い方を、おそらく嫌っています」
普通あれだけの才能があれば、それに頼るような生き方をするものなんですが。
「ほう、嫌いだときたか。理由は?」
「再現性が無いから、もしくは失敗時の損害が取り返しのつかないものになるから、どちらかでしょうね。
仮に今一度桶狭間のような戦をやったとして、確実に同じように勝てますか?思うような勝利を挙げられないと判明したときに、損害を極小に抑えて撤退、仕切り直しができるでしょうか?
勝敗は兵家の常という言葉があるように、不確定要素が多すぎる戦場において戦術の才覚に頼るやり方は、破滅の危険が無視できないと判断しているのでしょう」
「なるほど、面白い見立てだな。根拠は?」
「主家である織田大和守家を滅ぼした清洲城の戦い、尾張統一戦、桶狭間後の三河攻防戦、そして今手掛けている美濃攻略戦。彼は可能な限りの入念な準備の上で臨んでいます。また想定外な事態が発生した際には冷静に引き際を見極めて行動しています。彼が前線に出れば戦況をひっくり返す可能性が十分あったとしてもね。
彼が己の戦術の才能に頼るのは、真にやむを得ない場合に限られているのです」
やむを得ない場合多すぎだろって?それはそう。英雄ってのは英雄的な運命が待ち受けているんだなぁ、としか。
「つまりは華々しい活躍は不本意であると?」
「ええ、彼の本来の戦い方は相手より多い兵力を揃えて真っ当に勝つ事です。実際の戦争に至るまでに積み上げた準備の量で勝負する手合です。いうなれば戦の王道を目指す御仁で、結局のところ王道・定石が最も効果的だという事実を理解しているが故でしょうね」
「なるほどな。才能と本人の好みが乖離しているわけか」
「いえ?彼は戦略的な才覚にも恵まれていますよ?状況を俯瞰的に観る視点、目的を果たすために必要なものを漏れなく把握する認識力、危険と成果を天秤にかけて最善を選び取る判断力、人・物・金を適切に集約・配分する管理力。全てを非凡な領域で保持しています。
さらに言えば、政略的な才覚も同様です。常識にとらわれない思考力、領地にとって何が最善かを決定する決断力、何者であろうが必要とあれば切り捨てる非情さ、結果が出るまで試行錯誤を続ける実行力、そして敵を討ち倒す事を躊躇わない野望。全て高い領域にあります。その上で最も才能あふれているのが戦術の才だというだけですね」
天は二物を与えずという言葉は正しくないという反証例みたいな存在ですからねぇ。
「凄まじいな・・・真に人間か?」
「だから勝手に第六天魔王呼ばわりしているんですよ。別なたとえ方をするなら『追い詰めるといきなり呂奉先に変身する曹孟徳』といったところでしょうか。
無論、全てが完璧というわけではありません。例えに出した曹操が、人徳では劉備に、外交では孫権に、家格では袁紹・袁術に、政務では諸葛孔明に、機動力では董卓にそれぞれ僅かに及ばないように、かの御仁を一点で勝る人物はそれなりに居ます。しかしながら総てをぶつけ合うような戦国の生存競争において最も脅威となる人物だと私は考えます」
満遍なく優秀というのは付け入る隙が無い事に繋がります。王道を進むことも含めて危険を極小化するやり方は、流石に日本統一の一歩手前まで行くだけのことはあります。
「なるほどな、陸を挟んだ向こうの浜には確かに大層な人物が居るのだな。
しかし!それでは足らん!!遠い尾張の大名が如何に強大であろうが、所詮は遠国の出来事よ、貴様の敦賀が危機に陥る道理がない!」
「いえそれがあるんですよ。そもそも魔王が尾張の大名なのは今だけです。
もうじき美濃の大名になるでしょうね」
これが、魔王と他の戦国大名との決定的な違いなのですよ。
「・・・詳しく教えてもらおう」
「はい、まず織田弾正忠家の居城は元来勝幡という城でした。それが父・信秀の代より勢力の拡大に合わせて那古野、古渡、末森と居城を移していきました。
これは上総介殿にも受け継がれ、那古野、清須、小牧山と次々と居城を移しています。これまでの居城に特に不都合が無いにも拘らず」
「それは、家中が揉めそうだな」
「それが静かなものなのです。おそらく最初の家督争いの際にこの方針についてこれないものは纏めて粛清されています。故に織田家中の上級武士達は織田家としての帰属意識はあれど個別の地元意識は希薄なのでしょう。もちろん、居城でなくなったからといって領民の扱いが変わるわけでもありませんから、どこからも不満が上がらないのです」
実際には叔父の信光や犬山の信清等ゴタゴタが無いわけではありませんが、都度暗殺やら討伐やらで大事になる前に鎮静化しています。
「今は美濃一色氏との諍いがある故に攻略に便利な小牧山に居るというわけか。であれば美濃を獲った後は改めて今川家を狙うだろうに。せっかく当主の首を獲ったのだからな!」
「それがですねぇ、三河に今川配下であった松平家の独立を認めて、彼らに今川家との戦を任せるようです。織田としては尾張が安全であればそれでよし、東国へ進む気はないようです」
「清洲同盟とやらの話か?同盟と言いつつ支配下に置いただけに映るがな」
「彼らは対等な同盟です。今のところは。私はふたつの勢力が長く対等に協力する条件として、お互いの力量差が小さい事とそれぞれが別の敵を相手取る事が必要だと考えています。
三河における松平家の威光は大きく、今川という分かり易い外敵がいる事から、松平次郎三郎殿はどうにかこうにか三河を纏め上げました。
故に今は尾張と三河で対等、将来的には美濃・尾張・伊勢・南近江と三河・遠江・駿河・南信濃あたりまでは共に成長する絵図面を描いているでしょう」
それぞれ国の内情を考えると立場の差は明確ではありますが、対外的には対等と主張できる絶妙なバランスですねぇ。
家康からしたら、格上として依頼は遂行しなければならないが、臣従したわけではない。しかし、織田と国力が乖離しすぎれば臣従か裏切りかの決断を強いられる。
それを避けるためには必死で織田の成長に喰らいつくしかないですから、織田の期待には十分応えるでしょうね。
「配下ではないのなら尚更理解し難いな。今川家の首脳部を纏めて滅ぼしたせっかくの成果を他人に譲るなど、家臣だって納得するまい?」
「まぁ三河って色んな意味で物凄くめんどくさいらしいですからあんまり関わりたくないのでは?という冗談はさておくとして理由を説明しましょう。
まずは織田家は商売・物流を重視する家です。その視点から見れば難所が多い上に駿河、よくて小田原までしか無い東航路より琵琶湖から京・堺・西国へ通じる通商路の方がよほど魅力的でしょう。
次に成長する絵図面がしっかり描けている事。今の美濃攻略にて最低限の目的は津島〜大垣〜不破の関(関ヶ原)迄の通商路を確保する事です。実は稲葉山や中濃、東濃は二の次だったりするんですよ。それは近江側の鎌刃〜今浜(長浜)を抑える浅井と同盟の話が進んでいることから判断できます」
ただこの同盟はちょっと筋がよろしくないと思うのですがね。
美濃攻略後には織田と浅井の国力差が大きくなりすぎる上に両家の望む進出先が南近江でぶつかってしまいます。
魔王の合理的思考からすればその時点で浅井が臣従するのが当然なのでしょうが、浅井家がそこまでものわかりが良い程優秀かというとね・・・武勇は申し分ないですが、その分感情に引きずられる傾向が見受けられますので、理解はできても納得はできなさそうですよねぇ。
「ほう、貴様の情報源は浅井か」
「一部分そうであることは否定しませんよ。浅井は私達にとって大事な緩衝地域ですから、その動向は注視していますのでね。
さて、理由の最後は魔王の視点が遥かな高みにあることです」
「突然抽象的になったな、説明はしてもらえるんだろうな」
「はい、まず上総介殿の人生の目的というものを考えた場合、身内や部下、領民等への接し方から『自分と子分達が笑って暮らす事』ではないかと考えます。これ自体は何の変哲もない望みですね。
しかしながらここでいう子分達なんですが・・・ちょっと説明しづらいのですが、時間軸の移動に伴う変容と可能性が上総介殿にはよく視えているようなのですよね」
「言葉の意味からしてわからん!」
「例えば、一年前の領民達と現在の領民達の状況をみて、一年後の状況を類推する。こういう事を自然に行っています。
その上で自身や周囲の行動によってその類推結果がどう変化するか、仮に自分の行動を変えてみた場合の影響などを常日頃から無理なく迅速に考察しているようです。それが戦場での彼の強さの秘密でもありますが、それ故に彼が認識する子分の範囲が大きくなる傾向があるんです。というか子分の規模が最大になるような行動を好むというか」
なんというか魔王だけ別のゲームやってる印象なんですよね。皆が必死でサバイバルゲームやってる中、一人だけスコアアタックかRTAやっているような。
うつけ評価も、RTA勢特有の『だから〇〇しておく必要があったんですね。たぶんこれが一番早いと思います』を周囲が理解できなかったが故でしょうし。
「あれか?囲碁や将棋でいう『数手先を読む』ようなものか?」
「そうですね、それを日常的に、自然にやっているんですよ。領民の生活水準から国家戦略に至るまで。結果、彼の目にはまもなく子分になる者がしっかり写っているわけですね。
で、上総介殿は上に立つものとして子分達が笑って暮らせる世の中を目指すわけです、子分になりそうな者達を含めた形で」
信長という男は、多分頭の回転速度が物凄く速かったんでしょうね。せっかちだったり途中の説明を省いて結論だけ言ったり、独断・即行動の癖があったりするのも、他人と思考速度が大きくズレている事が原因でしょうし。
「はっはぁ!豪気なことだな、傲慢でもある!それでは先の未来では天下万民が其奴の配下か!?」
「今はその様な認識はしていないでしょう。可能性は感じているかもしれませんがね。今は浅井、松平両家と美濃の領民を数年後の配下と見なしている程度でしょう。
話を今川侵攻に戻しまして、迎撃ならともかく遠江・駿河へ遠征となると膨大な手間と時間と兵士と物資が必要になります。美濃と比べるととても割に合わない。じゃあ竹千代にやらせよう、どうせアイツ子分になるから。そうすれば俺は同じ手間と時間で近江と伊勢を狙えるな。こう考えたのでしょう」
「合理性に全振りというのも恐ろしいものだな、我の感情が理解を拒否するようだ。とりあえず上総介本人の思惑は理解したこととしよう。しかし、家中の者皆がそうではあるまい?家中の感情から来る反発はどうなのだ!?」
「こちらは単純な話です。実績と実力で殴りつけて黙らせているんですよ。なにせ織田家中で最も強い部隊が上総介殿本人のものですし、理解されずとも軍事政治問わずに結果を出していますからね。そうしているうちに教育が行き届いていったのです」
「織田家が強大であることは理解した!いずれ近江から貴様の敦賀を窺うであろうことも!!
しかしだ、あと二点わからんな!
貴様と魔王は馬が合いそうだ!というのになぜ奴の下につかない!?
また力を求める割に貴様が他領を攻め取らず居竦んでいる理由は!?」
実際には先に京方面へ向かい、幕府を立て直すことを優先するでしょうがね。そのあとのさらに強大になった魔王の相手ですよ、気が重くなりますねぇ。
「上総介殿の下につかない理由ですか・・・私は一乗谷朝倉家の被官に過ぎない身です。先に斯波家から越前守護職を奪い取って久しい家が、尾張守護ですらない者の下風には立てないでしょう」
「建前はいい!本音を話せ!!」
「上総介殿がとても優秀な人間だからですよ。私の総てを懸けて挑むにふさわしい。
また魔王のような能力を持ちながら只の人間であるのがいい。神仏とは違い、ヒトであれば殺せる。これ以上理由が必要ですか?」
ゲーマー界隈の格言ですが、『神であってもステータスが存在する以上は殺せる』わけですから人間である魔王相手に挑む前からあきらめる必要はないのですよ。
「で、他国を攻めないわけではありませんよ。一乗谷からの指示があればね。
とはいえ聞きたいのはそういう話ではないでしょうし、もう少し詳しく説明しますと、魔王の視界に入らないようにしているんです」
「ほう?つまりは『数手先を読む』対象にならないよう振る舞う必要がある、ということか?」
「ええ、魔王に認識されてしまえば私ごときでは手の打ちようがありません。視界外からの不意打ちに私の打てる政略・戦略・戦術の手筋総てをつぎ込んで、魔王を討ちます」
それで駄目だったらおとなしく一乗谷見捨てて軍門に降りましょう。そのとき生きていればの話ですが。
「さて、第六天魔王の脅威について語ることはかたりました。ご納得いただけましたか?」
「フン!我の器では計り知れぬ化物であるということは思い知ったわ!貴様も含めてな!!
だが我らのやることは変わらん!貴様とは親密に、されど一定の距離をもって接すればよかろう!違うか!?」
「えぇ、それで結構です。さしあたり加賀に転んだりしなければ十分ですよ。少しは考えていたでしょう?」
「はっはぁ!まあな!!だが貴様のように話が分かる奴が越前にいるとなれば話は別だ!わざわざ外れ籤を引くこともあるまい!!」
安居の脳筋共、感謝してくださいね。なんとか三国からの兵站線は維持できそうですよ。まぁそれでもゲリラ祭りは開催確定なんですが。
「では石州殿。船の設計に関しての話は川舟屋に伝えてあります。そちらにしばらく滞在してご意見いただけますでしょうか」
「了解した。しばらく世話になろう!」
「あ、念のため言っておきますが上総介殿の話は・・・」
「吹聴などせん!言っても我の言葉では余人に理解させることは不可能だ!安心しろ!!」
魔王に伝わりでもしたらその時点で終わりですからね。念を入れるにこしたことはないのですよ。
石州殿は海賊仕事で忙しくなる予定ですから、ここから漏れる可能性は低いとはいえ、ね。
ちなみに同盟まわりの景恒君の私見は、作者がディプロマシーというボードゲームで裏切ったり、臣従した(勝利を諦めて生き残りをはかった)り、裏切りを唆したり、裏切られたり、裏切られたり、裏切られたりした経験から得たものです。
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読んでいただきありがとうございます。
よろしければブックマーク・★評価・感想等お願いいたします。
・・・メンタル作者名どおりなんでお手柔らかだと嬉しいです。
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