最初の十九人
十九人の名の下へ、寝たまま運ぶ成人一人ぶんの砂袋四つが書き足された。
「重しは歩いて帰らないから、人数へ入れない」
セナは十九番目のセイを指した。健康な彼が麻布へ横たわり、砂袋を脚の間と腰の横へ固定する。救援四人と棚の住民十五人。夜の十キロを歩いたナドとペルは試行から外した。
午前七時半。
マレクは、古塩道の入口へ張った縄を跨がなかった。
先頭はヴェスとイェル。青縄車には出発時と同じ重さになる石袋を載せ、バロを繋いだ。担架の後ろにラカの支え歩行、棚の薪橇、石を入れた背負い枠が続く。
フィアは母親と棚へ残した。寝床から動けない者も出さない。
「出る」
ドムの声で、十九人が動いた。
三枚棚まで七百五十メートル。
最初の黒岩は広かった。二群を置いても、担架の向きを替えられる。
その先で道が細くなる。
マレクは予定した時刻を見て、青縄車へ手を振った。ヴェスが動かなかった。
「進める」
「音が違う」
ヴェスは道具を出さず、踵で石を一度叩いた。
高い響きのあとに、濡れた布を引くような音が残る。
「白い土が下へ回った。車輪を右へ寄せるな」
マレクは先を見る。表面の幅は変わっていない。
「何分待つ」
「待たない。左へ指一本」
トーマが車輪の外へ短い板を置く。ドムは後群を止め、担架を黒岩へ戻した。セナがラカの呼吸を数える。
「ここで立ったまま待たせるなら、肩を貸す人を先に替える」
マレクは時刻板の一行を消した。
先頭を急がせる代わりに、後ろの交代を早める。
バロが左の板を踏み、青縄車は三枚棚へ入った。輪金は白い縁へ触れない。
一台目の通過時刻をトーマが縄へ刻む。車を向こうの黒岩まで送り、同じ荷重と引き手で入口へ戻した。
二度目。
赤縄車と黒縄車の全長を写した二本の縄を青縄車の後ろへ置き、待機間隔も結び目で残した。
ドムが十五人の後群を、その縄に沿って動かす。人を白地へ立たせる代わりに、名札の付いた短縄だけを各人の位置へ置いた。
二台目までの印が黒岩へ入った時、最後の名札も白い帯を越えた。
三度目。
マレクは時刻を読まず、ヴェスの足元を見た。頷きを待って合図し、青縄車が抜ける。三台目の後端を示す結び目は黒岩へ届いたが、最後の四枚は届かなかった。
ラカ、担架の交代手、薪橇の制動手、背負い枠の交代手。
名札だけが、白い土の上に残っている。
次の小反潮が来る前に全員を入れるには、三台目を待てない。
「車そのものは通る」
ドムが言った。
「三台でも」
「通せば、後ろを置く」
ヴェスは名札を一枚ずつ拾った。石幅を測った数字は言わなかった。
ラカが肩を借りたまま、白い帯を見ている。
「札じゃなくても、私はそこにいる」
マレクは答えなかった。
帰りは十九人を二群に分け、薪橇と背負い枠の担ぎ手を途中で替えた。担架のセイにも一度立ってもらい、実際の患者なら替われない重さだけを砂袋で残す。
午前九時二十二分。名を呼ぶと十九人が返事をし、擦り傷も捻りもない。ラカの呼吸も出発前へ戻っていた。
棚では、オナがナドとペルの採水瓶を湯へ入れていた。夜十時十分に安全線から二百十リットル、十リットル抜いて十時四十分に水位が戻り、帰投は一時四十分。灰紐の時刻はすべて合う。セナが煮沸した水を白皿へ注いでも、砂も金属臭も出なかった。
「着いた時に減っている百九十五は戻せる」
オナは言った。
「今夜の百九十五だけだよ。明日のぶんまで湧くとは、札に書かない」
マレクは地図の古塩道へ丸を付けた。その端へ三台ぶんの縄が触れ、三つ目の印だけは白い帯に残った。
トーマが青縄車の底板へ手を置いた。木目に沿って、親指をゆっくり動かす。
「ほどくなら、こいつです」




