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第三信 少し静かになりました

日暮れの風に、少しずつ湿り気が混じるようになりました。

 

前回のお手紙にも、お返事はございませんでした。


もちろん、返信は不要ですと書いているのは私です。

ですから、それでよいのです。


むしろ、その静けさに、少し救われております。


前回、子供の声について少し書きましたね。


あのあとも、しばらくは同じでした。


夕方になると、外から大きな声が聞こえてくる。

笑い声。

走る音。

何かを叩くような音。


元気があると言えば、そうなのでしょう。


けれど、元気という言葉は、ときに周囲の我慢の上に成り立っていることがあります。


そう考えるのは、厳しすぎるでしょうか。


ですが、近頃は少し静かになりました。


私を取り巻く環境は、

以前よりもずいぶん整ったように思います。


朝の目覚めもよくなりました。

夜も、以前より深く眠れるようになりました。


人間、静かな場所に身を置くだけで、

これほど健やかになれるものなのですね。


もちろん、何もかもが消えたわけではありません。


窓の外の景色は、以前と変わりません。

道も、塀も、夕方の色も、何ひとつ変わってはいないはずです。


ただ、声が遠くなったのです。


それだけで、部屋の空気が少し軽くなりました。

湯を沸かす音が、以前よりも綺麗に聞こえます。

紙の上を滑るペン先の音も、よく聞こえるようになりました。


けれど、おかしなものですね。


静かになったはずなのに、

まだ、聞こえることがあります。


それでも、以前よりは眠れるのです。


静かになったことを、

私は喜んでしまいました。


それがいけないことなのだと、

わかってはいるのです。


けれど、

久しぶりに眠れた朝、

私は自分をうまく叱れませんでした。



このことについては、

いつか、あなたにもお話を聞いていただきたいですね。


あなたなら、きっと、

余計な言葉を挟まずに聞いてくださるでしょうから。


このところ、夜はよく眠れております。

それだけでも、随分とありがたいことです。


あなたもどうか、静かな夜をお過ごしください。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


返信は不要です。


かしこ


追伸


いつか、お会いする約束などできればよいですね。

あなたなら、きっと静かに聞いてくださるでしょうから。

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