第28話「あなたも、見つけてほしかっただけ」
笑い疲れたあと、私たちは静かにお茶を飲んでいた。
「ねえ、ロロ」
「はい?」
「ひとつ、聞いていい? なんですぐに言わなかったの。あなたも転生者だって、最初から言ってくれてもよかったのに」
ロロは少し黙ってから、ぽつりと言った。
「……怖かったんです」
「怖い?」
「あたし、前世でも今も端っこの人間で。誰かに踏み込むのも踏み込まれるのも苦手で。だから『知ってる』って言って、もしお嬢様に拒まれたら——そう思うと言えなかった」
カップの中の揺れる水面を、ロロは見つめていた。
「だから、ずるずる探り合いを続けて。そのほうが安全だったから。本当のことを言わずに近くにいられる、ちょうどいい距離で」
ああ、と思った。
この子は私と同じだった。
近づきたいのに近づくのが怖い。だから鎌をかけて、知らないふりをして。その茶番の中に、ほんの少しのつながりを隠していた。
「ロロ」
「はい?」
「あなたも本当は、見つけてほしかっただけなんでしょ」
ロロの肩がぴくりと震えた。
「自分と同じものを見てる人に気づいてほしくて。でも自分からは言えなくて。だから紅茶の日、わざとカマをかけた」
ロロはしばらく何も言わなかった。
それから小さく笑った。泣きそうな笑い方で。
「……かないませんね、お嬢様には」
私は手を伸ばして、ロロの手を握った。
「もう、ひとりじゃないよ。お互い」
窓の外で、星がまたたいていた。
見つけてほしかった二人が、ようやくお互いを見つけた夜だった。
次話:「二人ぶんの記憶で、運命を書き換える」




