第27話「知ってた。あの紅茶の日から」
「知ってた、って……いつから」
私が震える声で聞くと、ロロはにっこり笑った。
「あの、紅茶を吹いた日からです」
——え。
「あたしが『課金』ってこぼしたとき。お嬢様、思いっきり吹いたじゃないですか。あんなの転生者じゃなきゃ、ありえない反応ですよ」
ぐっ、と詰まった。一番最初の、あれ。
「あの瞬間に確信しました。『あ、この人こっち側だ』って」
ロロはカップにお茶を注ぎ足しながら続けた。
「だからわざとですよ。あたしが『課金』って言ったの。お嬢様がどう反応するか、試したんです」
「……はめたわね?」
「人聞きの悪い。カマをかけた、と言ってください」
くすくす笑うロロ。それから、ふっと表情をやわらげた。
「あたしも転生者です。お嬢様と同じ。前世であのゲームを、しゃぶり尽くすほどやり込んだ。——無課金で、ですけど」
ついに。
ついにお互いが口にした。口が裂けても言わなかった、その一言を。
「なんだ」と私は笑ってしまった。「最初からぜんぶバレてたんじゃない」
「ええ。最初から」
「私だけ、必死に隠して」
「めちゃくちゃ可愛かったですよ。バレないように、って顔して、しょっちゅう吹いてて」
「言わないでよ、もう!」
二人で笑った。お腹を抱えて、涙が出るくらい笑った。
長い長い化かし合いの、終わり。
隠し事のなくなった笑いはこんなにも軽い。
次話:「あなたも、見つけてほしかっただけ」




