第25話「離れてみて、わかること」
カモミールのお茶は和解の合図だった。
その日の夜、ロロがいつものようにお茶を運んできた。少しだけ、ぎこちなく。
「……お話、聞きます」
私たちは向かい合って座った。
「ロロ。ごめんなさい。黙って消えようとして」
「……はい」
「最初はね、本気でそのつもりだったの。悪役令嬢らしく、誰にも迷惑をかけず、ひとりで退場する。それがいちばんいいって」
私は湯気の立つカップを両手で包んだ。
「でも、この数日。あなたがいなくなってわかったの」
離れてみて、はじめてわかること。
「私、もうひとりに戻れない。あなたと笑えない毎日なんて、辺境のどんな穏やかな暮らしよりよっぽど寂しい」
ロロが目を見開く。
「……お嬢様」
「だから、消えるのはやめる。卒業してもどこにも行かない。あなたとセレスティア様と、この場所で生きていきたい」
言いながら、胸が熱くなった。
前世から願ってきた「穏やかな余生」。それはひとりで手に入れるものだと思っていた。
でも違った。
穏やかさは誰かと分け合って、はじめてあたたかいものになる。
「ロロ。あのね。私、あなたにちゃんと言いたいことがあるの。ずっと隠してきた、いちばん大事なこと」
ロロが息を呑む。
「それって——」
「うん」
私はまっすぐにこの子を見た。
もう、鎌をかけるのはおしまい。
逃げるのも隠すのもおしまいだ。
次話:「もう全部、言っちゃおう」




