↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢ですが、侍女もたぶん転生者です。お互い、口が裂けても言いませんけど  作者: 夜凪 蒼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/32

第18話「殿下の花が、咲くころに」

建国祭から数日が過ぎたある日、王宮の薔薇園で思いがけない光景を目にした。


ジルベールとミリアが、並んで薔薇の世話をしている。


「ミリア嬢。ここの土はもう少し水はけをよくしたほうがいい。根が息をしやすいようにね」


「わあ、そうなんですね! 殿下は本当にお詳しい。わたし、お花は好きでも育て方は全然わからなくて」


「なら教えよう。いくらでも」


きらきらと目を輝かせるミリアと、得意げな横顔のジルベール。例の早口スイッチが完全に入っている。


——お。いい感じ。


あの建国祭の後、私が「ミリア様は園芸を学んでみたいそうですよ」とさりげなく一押ししたら、二人はすっかり庭仲間になった。土だの肥料だの剪定だの、傍から見れば退屈きわまりない会話を、本人たちは心底楽しそうに続けている。私に向きかけていたジルベールの矢印が、ゆっくりと本来あるべき場所へ戻り始めていた。


「順調ですね」


いつのまにか隣に来ていたロロが小声で言う。


「ええ。やっと軌道修正できた。あとは放っておいても、薔薇もあの二人も勝手に育つでしょうね」


「うまいこと言いますね」


「でしょう」


二人でくすりと笑う。


王子がヒロインと結ばれれば、私は婚約者候補から外れて、断罪のシナリオは主役を失い行き場をなくす。計画どおり、万事計画どおりだ。


なのに、並んで花に水をやる二人を見ていたら、胸の奥がちくりと痛んだ。


——あれ。なんだろう、これ。


べつにジルベールに未練があるわけじゃない。私は最初から彼に恋なんてしていないし、あの早口園芸トークに丸一日付き合わされた身としては、むしろミリアに同情するくらいだ。


そうではなくて。


私はみんなを幸せにする手を打っている。ミリアもジルベールも、たぶんセレスティアも、一人ひとり収まるべき場所へそっと押してあげている。そして自分は全部が片付いたらそっと舞台から消えるつもりだ。誰にも惜しまれず、ひとりで。


それが望みだったはずなのに、いざその「ひとり」が現実味を帯びてくると——なぜだろう、胸の隅がひやりと寂しくなる。


「お嬢様?」


ロロが私の顔をのぞき込む。


「なんでもないわ」


私は慌てて首を振った。


殿下の花が咲こうとしている。それは私が誰よりも願ったことだ。


——でも。私の花はいったいどこに咲くんだろう。


ふと、そんなことを考えてしまった。答えの出ないまま。


次話:「味方の顔、はじめて見た気がする」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。