第13話「ねえ、いい加減に観念しない?」
メイド長の「中の人」発言は、結局、謎のままだった。
問い詰めるわけにもいかない。「今、中の人っておっしゃいました?」なんて聞いたら、こっちの正体を白状するようなものだ。
藪蛇。完全に藪蛇である。
「もう、考えるのやめましょう」と、ロロ。
「そうね。今は、それどころじゃないし」
建国祭がすぐそこまで来ている。セレスティアの、断罪フラグ二本目。それをどう折るか。
私たちは自室の机に地図を広げた。会場の見取り図。要人の配置。原作のイベント進行。
「セレスティア様はここで動く」私は広間の中央を指した。「大勢の前で、私の『罪』を告発する。証拠をでっち上げてでも」
「証拠……。原作だと、なんでしたっけ」
「ミリア様への、いじめの品。私が贈ったことになってる、嫌がらせの手紙とか」
「うわ。古典的」
「でしょ。でも、公式の場で出されたら、覆すのは難しい」
二人でうんうん唸る。
ふとロロが顔を上げた。
「お嬢様」
「なに?」
「あたしたち、いい加減、観念しません?」
——え。
どきっとした。観念。それって、まさか、お互いの正体を——。
「ち、違いますよ」ロロが、慌てて手を振る。「そっちじゃなくて」
「な、なによ。びっくりさせないで」
「もう二人で組んでること、認めません?って話です。まだお互い『一人で戦ってるふり』してるじゃないですか。鎌かけ合って」
ロロが地図をとんと叩く。
「でも、もう無理でしょ。この作戦、二人がかりじゃないと勝てない」
たしかに。
セレスティアの罠。ジルベールの暴走。私一人の知識じゃ、回しきれない。ロロの知識と、二人ぶんで、ようやく対抗できる。
「……そうね」
私はロロに手を差し出した。
「組みましょう、ロロ。建国祭を乗り切るまで」
ロロがにっと笑って、その手を取る。
「もちろん。退屈な結末は、ごめんですからね」
がっちり、握手。
正体はまだ言わない。前世の話もしない。
でも肩を並べて戦うことだけは、はっきり、約束した。
——いざ、建国祭。断罪フラグ、二本目。
私とロロの、本気の共闘がここから始まる。
次話:「破滅、予定どおり近づいてます」




