第12話「バレてないと思ってるの、私だけ?」
一度疑い始めると止まらなくなった。
ロロが転生者。それはもう確定。でも——もしかして、バレているのは、ロロだけじゃないのでは?
たとえば、セレスティア。彼女は「物語の正しい順序」を知っていた。あれは思い込み? それとも、本当に筋書きを知っている?
たとえば、ジルベール。あの園芸知識は隠しルートの裏設定だ。普通の住人がたどり着ける情報だろうか。
考え出したら、きりがない。
「ロロ。この世界、転生者だらけなんじゃない?」
朝の支度の最中、私はつい口走った。
「えっ。急になんですか」
「だって、みんな、なんか知ってそうな顔してるのよ」
「それ、疑心暗鬼ってやつですよ」
ロロが半笑いで櫛を動かす。
「お嬢様。一回バレそうになると、世界中が敵に見えるやつ。前世でもありませんでした? 返信を忘れて、相手を怒らせてないか一日中びくびくする、みたいな」
「……あった」
ものすごく、あった。
「でしょう。あれと一緒です。落ち着いてください」
落ち着け、私。たしかに考えすぎだ。
そう思った、その日の午後。
廊下で、すれ違いざまに、メイド長がぽつりと言った。
「お嬢様。最近、お元気そうで何よりです。……『中の人』が、変わったみたいに」
——え。
ぴしっ、と固まった。
中の人。今、メイド長、中の人って言った?
振り返る。けれど、メイド長はもう何事もなかったように廊下の奥へ歩いていく。
空耳? それとも——。
その夜、私はロロに半泣きで報告した。
「ロロ! メイド長まで、中の人とか言ってた!」
「……えっ。マジですか」
さすがのロロも櫛を取り落とした。
「この屋敷、どうなってるんですか」
「知らないわよ! だから言ったでしょ、転生者だらけだって!」
二人で真っ青になる。
バレてないと思ってるの、私だけ? いや、ロロもか。いや、もう誰が何を知ってるのかさっぱりわからない。
混沌だ。完全に混沌である。
次話:「ねえ、いい加減に観念しない?」




