↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢ですが、侍女もたぶん転生者です。お互い、口が裂けても言いませんけど  作者: 夜凪 蒼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/32

第11話「前世の話は、しない約束でしょ」

その夜、私はなかなか眠れずにいた。


建国祭。セレスティアの宣戦布告。ジルベールの暴走。考えることが多すぎて、頭がぱんぱんだ。


寝室の扉がこんと鳴った。


「お嬢様。起きてます?」


ロロだった。手には湯気の立つカモミールのお茶。


「眠れないかと思って」


「……ありがとう」


カップを受け取る。あたたかい。湯気の向こうで、ロロがベッドのそばに腰を下ろした。侍女らしからぬ距離の近さ。でも今夜はそれがありがたかった。


「ねえ、ロロ」


「はい?」


「私、ちゃんとできるかな。建国祭」


弱音だった。柄にもなく。


ロロは少し黙ってから、言った。


「できますよ。お嬢様は、もう、ひとりじゃないんだから」


その言葉に胸が詰まった。


——ああ、もう。だめだ。言ってしまいたい。


「ロロ。あのね。私、本当は」


前世の記憶があるの。あなたと同じ。だから、わかるの。あなたが何者なのかも。


喉まで出かかった。この子になら、全部、打ち明けてしまえる気がした。


でも。


「——お嬢様」


ロロがそっと私の言葉をさえぎった。


「前世の話は、しない約束でしょう」


え、と顔を上げる。


ロロはやわらかく、でも、どこか寂しそうに笑っていた。


「まだ、言わないでください。お互い」


「……なんで?」


「言っちゃったら、終わる気がするから。この、ふわふわした感じが」


ふわふわした感じ。


お互い知っているのに、知らないふりをして。探り合って、笑い合って。その、奇妙であたたかい時間。


たしかに、それは一度はっきりさせてしまえば消えてしまうのかもしれない。


「……わかった」


私はカップに口をつけた。カモミールが甘い。


「じゃあ、もう少しだけ。秘密のままで」


「ええ。もう少しだけ」


二人で笑った。


言わないことで、守られる関係もある。今はそれでいい。


——でもいつか。ちゃんと言葉にする日が来る気がした。


そのときはきっとお互いの、いちばん大事なことを。


次話:「バレてないと思ってるの、私だけ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。