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Ⅶ
——ドンッと音がして、赤い花が空に咲いた。
「——え……?」
「あの事故は、友香の命を奪ったんだ」
その声は、泣いていた。
——ドンッ
「勇哉、何を言って——」
「あの時、路地にいた時、車に気付かなかった僕を、友香は突き飛ばして助けてくれた。植木にぶつかったけど、大したことはなかった。もう、痛くないよ」
「え……?あの時、勇哉は頭を打って……そのまま……」
——ドンッ
「友香、友香はもう、現実を見なきゃいけない。いつまで自分をごまかし続けるの?」
「……私は……」
——ドドン!
「……頼むから、僕のことを、勝手に、友香の中で、死なせないで……ね?」
——ドドン!ドン、ドン!
続けざまに光の花が咲く。
儚くそれは散っていく。
それは、そう。命のように……
「……勇哉……」
勇哉は黙って私の手首を掴んで、花火の光にかざした。
私はそれをみて絶句した。
ドドン!ドドン!
——私の手は、透けていた。
その瞬間、全て理解した。




