Ⅴ
私たちは2人で、真っ赤なりんご飴にかじりついた。
「……美味しい!」
「そうだね。ここにして正解だったよ」
艶々として真っ赤な、綺麗なりんご飴。
食べるのがもったいないぐらいだった。
でも、食べないのももったいない。それに、どうせもう一口食べている。
私は再びりんご飴にかじりついた。
うん、やっぱり美味しい。
勇哉とここに来れて、よかったなぁ。
「ねえ、そういえばさ、花火はまだ始まらないの?」
「まだみたいだ」
お祭りの喧騒の中、1組のカップルがりんご飴を食べているならば別にいいだろう。だけど、もし勇哉の姿が周りの人に見えないのだとしたら……私は誰と話しているのかと変な目を向けられるに違いない。実際、疑わしげな目線がこちらへと飛んできている。
勇哉もそのことを気にしていたのだろうか、ふと、私の名を呼んだ。
「……ねえ、友香」
「なあに?」
「僕、2人きりで花火を観れる特等席を知っているよ」
「本当に?どこ?」
「ついてきてよ」
私は勇哉に連れられて、特等席へと向かった。
その特等席は、高台にある神社だった。
確かにそこには誰もいない。
私たちは境内に座った。
「たしかに、ここなら2人きりになれるね」
「そうでしょ?花火も綺麗に見えるんだよ」
不意に、お腹の底に響くような、ドンっという音がして、空に光の花が咲いた。
「わぁ……!」
「綺麗!」
私たちは思わず声を上げていた。
ドン、ドン、と花火は上がっていく。
その度に、空に色とりどりの花が咲いた。
「本当に綺麗だね、勇哉」
「そうだね。でもね」
——ドンッ
「友香のほうが綺麗だよ」
「本当?嬉しい」




