Ⅱ
帰り道でのことだった。
駅へと向かう路地を、2人で歩いていた。
私は律儀に道の端を歩き、勇哉は車通りが少ないからと、車道の中央を歩いていた。
「危ないよ、勇哉」
「このぐらい大丈夫ですよ、友香先輩」
ひやひやしながら私が注意しても、勇哉は平気そうに歩いていた。
そんな時、不意に私が後ろを振り向くと、猛スピードで走る車がすぐそこにいた。無音で走る車だったから、勇哉は全く気付かなかったのだ。
「……勇哉!」
私は勇哉を突き飛ばした。勇哉は飛ばされた。街路樹に頭を打ち付けたのだろうか。
勇哉は、動かない。
私はというと、勇哉のことを強く押したがために前によろめいて、すんでのところで車に当たらず、無傷だった。
(嘘でしょ?)
思考が働かなくなってくる。
目の前が、ぼんやりとして来て、遠くの方から救急車のサイレンが聞こえてきた。
「もう間に合わない」
「多分死んでるぞ」
そんな通行人の声が聞こえる。
私は悲しい事実を悟った。
次に視界がはっきりした時、勇哉はいなかった。
(勇哉は、死んでしまった)
私が突き飛ばして、頭を打ったせいで。
私はこうやって助かってしまった。強く押したがために前によろめいて、すんでのところで車を避けてしまった。
(私のせいで、勇哉が死んだ)




