刈り手の手首
早穂の試し刈りで、鎌を振り続けた農夫が手首を痛めた。収穫が近づくと皆が仕事を急ぎ、休むのを恥じる。ハロルドは気合で乗り切れと言いかけたが、ロイが自分の足首をさすりながら止めた。痛みを隠して働いたせいで、後から長く休むことになったのだ。
ミラは鎌の本数を数え、使う人の手の大きさも確かめた。柄が太すぎて握れない者がいる。ギルが握りを削り、セランは刃の研ぎ方を教えた。新しい道具を大量に買わなくても、手に合う形へ直せるものがある。
休憩を取ると収穫が遅れるという声には、ハロルド自身が答えた。倒れた人を運ぶ時間まで含めれば、速さだけを競っても仕事は終わらない。彼は自分の畑で試し、午前の途中で短く水を飲む時間を作った。翌日、鎌を握る者の手つきが少し落ち着いた。
リネは刈り手のために布の手袋を縫ったが、厚い布だと鎌が滑ると指摘された。怒った様子は見せず、薄い端切れで作り直した。針を使える人にも、畑での使い勝手は分からないことがある。レアは手袋が売り物になると喜ぶ前に、実際に使う人へ感想を聞いた。
休憩の水甕は畑の端へ一つ置いただけでは足りず、遠い畝の刈り手は往復に時間が掛かった。ニコが小さな甕を二つに分けて運ぶと、歩く距離が減った。水を飲む者が増えても節約しようとしないよう、サラは汲み場へ補充を頼んだ。暑さは働く人を選ばず、遅い人ほど水が要らないわけではない。
ミラは手を痛めた農夫の休みを帳面に書いた。休む人がいることを失敗の印にしたくなかった。麦は待ってくれない。それでも来年も刈る人の手が残っていなければ、豊作に意味はない。鎌の音は朝から夕方まで続いたが、途中で水甕を囲む笑い声も聞こえた。




