帰らなかった質問
郡都を発つ朝、ミラはティアの書類を取り出した。妹リネが元の雇い主へ戻らなければならないのか、誰かに尋ねたい。しかし税の窓口では扱えず、労働契約については別の役人に相談する必要があった。受付には人が並び、今日一日待っても話せるか分からないという。
エダは村へ帰る道の日数を数えた。井戸の工事は始まっており、ベルクの体調も気になる。ミラは無理に列へ残らず、相談の受付日と必要な書類だけ確認した。契約書の写しがなければ判断できないと教えられ、彼女はその言葉を紙へ書いた。
帰り道、二人は隣町の市を通った。レアの袋を以前買った商人が店を開いており、使い心地を聞くと丈夫だと答えた。ただし大きさが少し合わない。ミラは袋の寸法を確かめ、レアに伝える約束をした。役所の行き帰りにも、暮らしの話は続いている。
村の手前で雨が降り始め、エダの荷が濡れかけた。彼女は申請書を胸元へ抱え込み、ミラへ笑った。「銅貨より大切な紙だね」。二人で泥の道を歩き、夕方にはいつもの鍋の匂いを嗅いだ。留守中に大きな事故はなく、ギルが井戸の柵を直したと聞いた。
峠道の休み場で、二人は村から持参した水を最後の一口まで飲んだ。エダは宿で買った固いパンを少し残しており、ミラへ半分分けた。役所で何も決まらなかった落胆はあるが、帰る家がある。道の向こうへ夕煙が見えた時、二人は歩く速さを揃え、泥の深いところでは互いの手を取った。
ティアに会うと、ミラは答えが出なかったことを先に伝えた。妹を守る確かな方法は、まだ分からない。ティアは残念そうだったが、必要な紙を揃えることに同意した。村へ持ち帰ったのは一つの受領印と、まだ答えのない質問だった。それでも次に調べる場所は分かった。




