待合の長椅子
郡都の役所は朝から混んでいた。石畳の入口には農夫と商人が並び、税の書類を持った人々が順番を待っている。ミラはハルヴェの名を告げたが、受付の書記は村の位置を知らなかった。地図を示すと、彼は初めて山際の小さな印へ指を置いた。
審査はすぐに始まらず、二人は長椅子で昼まで待った。隣の農婦は洪水で麦を失い、税の減免を求めて来たという。別の男は村の共有地を誰が使うか争っていた。ミラは自分たちだけが役所から遠いのではないと知った。
エダは途中で弁当を開き、持ってきた乾いたパンを二人で分けた。受付の書記が忙しく走り回っているのを見て、彼女は空いた椅子を一つ寄せた。書記は座る暇もないまま通り過ぎたが、夕方に戻ると「明日の朝、もう一度来てください」と先に教えてくれた。
宿を探すと、役所の近くは高すぎた。フェルンの教えた通りへ歩き、馬小屋の隣の小さな部屋を借りた。雨漏りはしないが壁が薄く、隣の客の会話が聞こえる。ミラは村の狭い寝床を思い出し、それでも今夜は紙を濡らさず眠れることをありがたく思った。
役所の壁には、季節ごとの納税日が大きく掲げられていた。ミラは村の広場に貼る紙と似ていると思ったが、文字の小さい部分は読めない人も多い。隣で待つ老人は息子に読んでもらっていた。役所の決まりが見える場所にあるだけでは、皆へ伝わるとは限らなかった。
エダは眠る前に、翌日聞くことを三つに絞った。税の猶予の条件、橋の修理を誰が決めるか、回答の期限。全てを一度に訴えても、相手は覚えきれないだろう。ミラは新しい紙へ短く書き直した。村の困りごとを役所へ運ぶには、荷車とは違う準備が要った。




