郡都の封書
役所から新しい封書が届き、税の猶予申請には郡都での審査が必要だと分かった。ベルクは自分が行くつもりだったが、足を痛めて長い道を歩けない。ミラが同行を申し出ると、エダも記録係として加わった。村を留守にする間、誰が相談を受けるかを決める必要があった。
ベルクはサラとギルへ連絡を頼み、農地の問題はハロルドに任せた。全ての決定を一人へ集中させないため、村長の印が必要な用件は帰るまで待つ。ただし井戸で事故が起きた時は、ダレンの判断で使用を止められると確認した。
旅の準備をするミラは、初めて村の外へ出る不安を感じた。市へは行ったが、役所で話すのは別のことだ。エダは受領印のある申請書を布へ包み、同じ数字を書いた控えを村に残した。紙を一枚失うだけで説明ができなくなる危険があった。
出発の前夜、ティアが自分のいた峠の領主について手紙を持ってきた。役所へ行くなら、妹の契約のことも聞いてほしいという。ミラは税の書類とは別に、事実だけを記した紙を受け取り、本人の許可なく誰かへ見せないと伝えた。
旅に使う靴を探すと、ミラの靴底には小さな穴が開いていた。レアが急ぎで縫い直し、雨が降った時のための布を付けた。村の仕事を片付けたいと出掛ける本人が、道で倒れては意味がない。サラは携帯食を渡し、宿代とは別に温かい食事の分も持つよう勧めた。
村を出る朝、広場にはいつもと同じ鍋の煙が立っていた。ギルは井戸へ、ハロルドは畑へ向かい、子どもは水甕を運んでいる。ミラがいなくても仕事が止まらない光景に、少し安心した。彼女が守りたいのは、自分の目が届く範囲だけではなかった。




